011-出会い系。

でも、出張ホストに会うのは、勇気が要りすぎる。
マサトさんのページは、時々眺めていたけれど、
そこからの一歩を踏み出すのは容易じゃあない。

でも、私は毎日あれこれ考えていた。

出会い系サイトとかに、一回くらい登録してみようかな。

知らない誰かとメールして、こぼすくらいしてみたい。
一旦そう考えると、やたら心がはずんだ。

仕事のトラブルもあって、ちょっと気持ちがささくれだっていた日。
休憩時間に、前から目星をつけていたところにアクセスしてみた。
必要事項を入力して、思い切って送信。

途端、集中豪雨みたいにメールがきた。

慌てた。
どういうシステムになってんの?

茶髪でロン毛の日焼けした若者やら、
胡散臭いとしか言いようのない、年収〇千万とかの、
誰が見てもサクラとしか思えない人からのメールが
写真つきでバンバン届く。

なんだか、サッパリわけわからない。
じっくり相手を探すというわけにはいかないの?

でもまぁ、暇つぶしに「まる子」と名乗って、律儀に返信はしてみた。
年齢が離れ過ぎてます、
イケメン過ぎて私にはもったいないです、
エトセトラ。

今もわかんないけど、私がアクセスすることで、利益を得る人がいる訳だよね。
とにかく、このサイトがヤバいことは、よおくわかった。

その日のうちに退会。
正味、半日だった。
なんか疲れたぁ。

ただ、一人心に残っているコがいる。

何回かやり取りして、私が夫とのセックスレスを打ち明け、
「私に性欲さえなかったら、シアワセになれるんだけどね」
と、思わず本音をこぼしたら、すかさず返事をくれた男の子。
太郎君とか名乗ってたかな。

《まる子ねえさん、そんな淋しいこと言わないで》
《「性欲はあって当たり前、そんなふうに考えないで》

見も知らない、おそらくは写真とは別の、アルバイトのコなんだろうな。
もしかしたら、女の子かもしれない。

でも、そう言ってもらえてちょっと救われた。

私に性欲さえなければ、何もかもがうまくいくのに。
これは、この18年の間に何百回も考えたこと。
夫と同じように、私も淡泊ならどんなに良かったろうと。

でも、したいと思うのは自然なことなんだよね。

ありがとう、太郎クン。

こんなふうに、誰かに聞いてもらって気持ち上向きになるなら、
思い切って、出張ホストさんにもメールしてみようかな。

マサトさん、悪い人じゃなさそうだし。
どういう感じか、とりあえず飲むだけでもいいし。

でも万が一、ホテルとかに行くことになって、
私はなんでもない顔して、家族に会えるだろうか?

夫は11時過ぎには出かけてしまうけど、娘の目が気になる。
飲み会で遅くなることはたまにあっても、訳が違う。

真面目な女子校に通い、恋愛経験は皆無なコだけど、勘は鋭い。
母親がオンナの顔を見せることに、おそろしく敏感だ。
シュンとメールやりとりしていただけで、何かを感じていたフシもあった。

やめとこ。
この夏さえ終われば、私の気持ちも少しはクールダウンするだろう。

けど、翌日娘が言う。
「今度さ、〇〇ちゃんちに泊まりに行きたいんだけど、いい?」

こんな機会は年に一度あるかないか。

マサトさん、会ってみようかな。


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010-マサト。

去年の夏、私はただただ異常だった。

いったい、今までどこで息ひそめていたんだろう。
呆れるくらいの勢いで、欲望が溢れ出してきて、
それは、もはや自分では制御不可能なマグマみたいだった。

今思えば長い間、オンナの部分を必死に抑えていたんだろう。
世間的には、良い母、良い妻、そしてまっとうな会社員をこなしていた。

旦那に指一本触れてもらえない自分を、必死に隠すかのように。

でも、今、
誰かとセックスしなければ、死んでしまう。
今しなきゃ、このまま死ぬことになる。
そんなのは嫌だ。
絶対に嫌だ。

夜、一人で自分を慰めたあとも、眠れずにいつまでも考え続けた。

出会い系?
出張ホスト?

でも、18年もしてない49歳のおばちゃんを、誰が相手にしてくれる?
気味悪がられるに決まってる。

こっそり覗いたサイトにこんなことが書いてあった。
〈旦那に相手にされないおばちゃんなら、
股の間濡らして歩いてるから即ヤレるよ〉
〈いやぁ、でもオレはやっぱ無理〉
〈だよな~(笑)〉

自分のコト言われてるみたい。
悲しかった。

でも、そしたら誰とすればいいの?
もうすぐ50に手が届く、ずっとしてないオンナはこのまま死ぬしかないのかな?

今の私は、セックスしたい自分に罪悪感感じてる。
あまりにも長い間しなかったセックスに、恐怖感も感じてる。
そして、同じくらい強烈な憧れを感じてる。

そして何より、それらの気持ちが、全部歪んでいるのを知っている。

こんなのは大人の女として、間違ってる。
セックスをこんな目でしか見られない自分が、何よりも嫌だ。

このままじゃダメ。
でも、夫は多分変わらない。

プロは?

そう、お金を払って成り立つ関係。

もちろん、そんなことはしたことはない。
でも、男の人なら、奥さんに拒まれたら風俗に行くよね。
女もお金払ってしてもらうしかないじゃない。
そう、それしか手段がなかったら。

そうしないと今にも死んじゃいそうなくらい、
崖っぷちまで追い詰められてる私みたいな女は。
それしかないと思い込んでる女は。

なんでもない顔をして、毎日普通に仕事はしている。
職場では、よく夫の話もするし、
回りの誰もが、仲の良い夫婦だと思っているだろう。
そして、それは間違いじゃない。

けど、みんなは知らない。
休憩時間に、私が出会い系サイトや、出張ホストのサイトを、
夢中になって覗いていること。
お気に入りに登録してあるサイトもある。
だだし、アクセスはしたことはない。
一歩を踏み出せない。
保険みたいに時々開いて見るだけ。

中に一人、マサトと言う人がいた。
40歳の出張ホスト。
《だだ普通に会ってご飯食べたり、一緒にドライブしたり》
《一人では淋しいとき、気軽なパートナーとして使ってください》

あちこち読んだけど、私のテクニックで貴方を昇天させます、
が売りのホストに比べたら好感が持てた。
マサトは、なんか純粋さが残っているよな気がした。

毎日、プロフィールを開いて何回も見てみた。

会ってみようかな。


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009-夫のひとこと。

通いあったかのようにみえた夫と私の気持ちだったが、
それは、ほんのつかの間のこと。

夫は毎日昼過ぎに電話をくれる。
仕事が終わって、うちに向かう途中。
共働きですれ違いの多い私達の、いつからかの習慣だった。

お昼休みだったので、電話に出た。
週末のお祭りの話。

「都合つく?行けそう?」
「アサミは大丈夫なのか?」
「…?」

アサミは私達の娘、高校2年になる。

「何言ってんの。高校生の娘が、親と行く訳ないよ」
私は笑った。

でも、夫はあきらかに落胆している。
私は努めて明るく言う。

「たまには二人で行こうよ」

すると、夫はこう言った。
「おまえ、ヘンなこと考えてんじゃないだろうな」

一瞬、何を言われたかわからなかった。
やがてその意味がわかって、言葉を失った。

夫は、私がこの前の続きをしたがっていると思ってるんだ。
二人きりになりたがる私を、そんなふうに思ってるんだ。

どんなふうに返事をしたか、正直覚えていない。
ただ、あまりにもショックを受けると、頭が真っ白になるって、
こういうことなんだと思った。

この前、私が久しぶりに幸せで満ち足りて、
涙が出るくらい嬉しかったあの時間を
夫はその先を強要されると危ぶんでいたのか。

電話を切る。

大袈裟でなくて一人きりなら、その場に突っ伏して、
大声出して泣きわめいていたと思う。

貴方は今、自分が何を言ったかわかってる?
どれだけ私を傷つけたのかわかる?

妻が夫に欲情したらいけないの?
長い間、言い聞かせて、堪えて。
貴方が大好きだから、こんなふうな触れ合いでも十分だと。
やっとの思いで自分に言い聞かせたのに。

貴方は、そんな目で私を見てたんだね。

仕事中だから、泣くわけにはいかない。
ましてや私の仕事は、人と接すること。
赤く泣き腫らした目で人前には出られない。
必死にこらえた。

夫は、自分の何気ない言葉が、私にとってはどれだけ衝撃的なものだったか、
今もわかっていないだろう。

でも、この一言が私を変えた。
そう思っている。

せっかく自分の中で折り合いをつけた気持ちが、ガタガタと崩れてゆく。
やるせなくて切ない気持ちは、前にもまして酷くなった。

不信感、不安感、焦燥感、絶望感。

情緒不安定になった私は、また無口になる。
夫は、何も言えない。

出掛けるのを待ち兼ねて、ベッドに横たわる。

自分に触れている瞬間だけが安心出来た。
もう誰にも触れてもらえないこの身体を、私が愛してあげなきゃ。
だって、もう誰にも愛してもらえないから。

またオナニーせずにはいられなくなった。
ある時、快感が極まりそうになる瞬間、水っぽいものが吹き出してきた。

コレって、もしかすると潮ってヤツ?
私は潮吹きって身体なの?

続けてやっていると、面白いように出てくる。

こういうの、男の人って喜ぶんだよね。
なんとなく、知ってはいた。

でもさ、普通はパートナーとセックスして、開発されるもんじゃない?
自己開発だなんて、笑っちゃう。

馬鹿みたい、私。
自分の身体のことなのに、この歳になるまで知らなかったなんて。
本当に馬鹿みたい。


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008-ふれあい。

誰かに優しく抱きしめてもらうこと。
それが、こんなにも気持ちを穏やかにするんだな。

何も口に出さなくても、鼓動が、ぬくもりが、言葉を伝えてくれる。
大丈夫。
安心して。

そんな気持ちを形にするかのように、シュンから長い長いメールが届いた。

《会う前からなんとなく想像はついていて、どうしよっかな、と思ったけど》
《俺にはお前がどんなにダンナを好きかってことしか、伝わってこなかったよ》
《ミオコは、愛してるってことをダンナに表現してほしいだけの、
可愛い女なんじゃないか》
《だったら俺に話したように、抱きしめてほしい気持ちを素直に伝えようよ》
《私は今もこんなにアナタが好きなんだよ、ってね》

本当に長いメールだった。
こんなに長い携帯メールはもらったことがなかった。
携帯で長文って苦手、と苦笑していたシュンがくれた。

涙が出た。

《なんてったって、特別な友達だからね》

数日後、私は多少お酒の力も借りて、TVを見ている夫にくっついてみた。

いつもは遠慮してしまっていた。
たまにしかない休みは、余計なことで煩わせたくなかったから。
夫が疲れ果ててるのは、私が一番良く知っているから。

このところ、口をきかなかったり、朝っぱらから泣いてたり。
そんな私を彼なりに案じてくれていたのだろう。

ぺたっとくっついてきた私に、夫は安心した表情をみせた。

両手を夫の身体にまわして、抱きついてみた。
勇気を出して肩の辺りに唇をつけてみた。
首筋やあごにも這わせてみた。
そして唇にも。

夫は拒まなかった。
私をじっとみつめていた。

夫婦なのに嘘でしょ?
って疑うかもしれないけど、私達はこんなことも18年ぶりだった。

ソファに座る夫と私は、何も話さずただ抱き合っていた。

それが、お互い部屋着を身につけたままだとしても。

長く味わったことのない満ち足りた気持ちが、私を包む。

久しぶりに夫に触れる。
生え際の白髪も、目尻のシワも、全部が愛おしくて涙が出てきた。

やっぱり大好き。

私と夫はこれでいいんだ。

でも、こんなことさえ長い間出来なかった。
何故?
勇気を出せば、こんなに簡単なことなのに。

「来週、お祭り行かない?」
地元の夏祭りがもう少しだった。
私は無性に夫と二人で過ごしたかった。

「いいよ」
夫が言ってくれた。

夫は深夜働いている。
夜出掛けるために、夕方から11時過ぎに眠る。
休みといっても、そのペースはあまり崩さない。
だから、私達が夜二人出掛けるなんてことは、ずっとずっとなかった。
私も言えなかった。

でも二人で、お祭りに行ける。
行くところなんて、どこでも良かった。
ただ、二人で手をつないで歩きたかっただけ。

翌日、シュンにもメールした。
《私、素直になれたよ》
《いろんな形があるけど、私はこれで十分》
《ホントにいろいろありがとう、感謝!》

けど、ほどなく、私は夫の言葉で泣くことになる。


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007-ハグ。

来年50になるのに、結婚だってしてるのに。
今の私は男の人に対する免疫力ゼロな、
なんだかやたらヘンな奴になっている。

職場でもちょっと肩を叩かれたり、ちょっと手が触れたり、
そんな程度のことに、恥ずかしいくらいにビクッとする。

これって、大人のオンナとしてどうよ。

だから、軽くメールしたものの、
いざシュンに会うとなったら、緊張で身体がガチガチした。

こんなんで私とセックスしてほしいなんて、言える訳はないか。

「よぉ」
待ち合わせたシュンは、陽に焼けて元気そうだった。
49歳という年齢にふさわしく男の色気も備わってきて。
きっと今も、精力的に女の子と付き合っているのだろう。

お互いや友人の近況から、子供のこと。
ここ数年は会っていなかったから、話はつきなかった。

思っていたより重くならず、夫のこともこぼせた。
シュンは言葉を選んで、ひとつひとつに丁寧に答えてくれた。
結婚式で一度会っただけだけど、彼は夫に好意的だ。
もちろん、私の話を通しての夫しか知らないが、いつも褒めてくれる。
このところの私の苛立ちや焦りも、少しずつほぐれてくる。

夫は無口だけど、シュンはホントに聞き上手で話上手だなぁ。
女同士のようにおしゃべりに花が咲く。
久しぶりにお腹を抱えて笑った。
シュンも笑って言う。
「今日ってシリアスな話じゃなかったっけ?」

けど、私の心の中はずっと同じ言葉を繰り返していた。
かなわないことだと、恥知らずで無謀なことだと思いながら。

〈抱きしめて〉
〈キスして〉
〈セックスして〉

そんな気配は微塵も出さず。
笑いながら、あいづちうちながら。

でも私のよこしまな気持ちは、見えかくれしていたかもね。
勘のいいシュンは、気づいていたかも。
ただ、あまりに思い詰めた私が痛々しくて、
つとめて明るく振る舞ってくれたのかもしれない。

私は誰かに触れて欲しかった。
愛情とか、友情とか、そんなものなんか全くなくても構わない。

ただ、男の人に抱きしめてもらうということがどんなことだったのか、
そんなことすら忘れてしまった自分が可哀相で、
一度でいいから味わいたかっただけ。

〈抱きしめて〉
〈キスして〉
〈セックスして〉

「なんか、久々ゆっくり話せてよかったね」
そう言いながら店を出て、車に向かうシュンの後ろ姿に、
私は勇気を振り絞って言った。

このまま帰ったら、絶対に悔やむ。

「あのさぁ、ハグしてくれないかな」
言えた。

シュンは振り返って、何も言わずに抱きしめてくれた。
ギュッと。

私はやっと口に出せた安堵感で、身体の力が抜けた。
シュンの腕の中で深く息をついた。

うれしい。
あったかい。

とても長く感じられた。
シュンの優しい気持ちが、身体越しに伝わってきた。

男の人に抱きしめてもらうって、こんなに幸せなんだ。
こんなに無条件に安心するんだ。
長い間忘れていた。
18年ものあいだ。

「…ありがとう」
「どういたしまして」
シュンは笑ってくれた。


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006-シュン。

シュンと会ったのは、15歳の4月だった。
まだバンカラ(多分、若い人は知らないね)
な名残のある地方の高校で。

私は地元だし、制服もなく圧倒的に男のコの多い、
憧れの学校に入れた嬉しさで、舞い上がっていた。
けど彼は、親の都合で
急きょこの学校に入ることになったらしい。
今にして思えば、
彼が青春真っ只中で都会から田舎に来なきゃならなくなったのは、
ホントにお気の毒様としかいいようがない。
不本意に田舎で過ごすことになった彼は、
最初から少し屈折してて、浮いていた。

初めて部室に行ったとき、
何故か彼だけがぽつねんと座ってた。
私は彼を先輩だと思い込んで、
緊張して馬鹿丁寧に挨拶をした。

「よろしくお願いします!」
「あっ、俺一年だから」
「…」

私達は3年間を、
一緒に新聞記事書いたり、
油絵描いたりして過ごした。
お互いの恋の悩みも、たくさん相談しあった。

長身、長髪、派手な目鼻立ち。
ガリ勉眼鏡が標準仕様の学校では、
浮きまくってたような気がする。

でも、34年もの間、ずっと友達。
大切でかけがえのない友達。

別々の大学に入ってからは、
お互いの知り合いに声かけて合コンしたり。
それぞれの結婚式にも参列したし。
ここ数年は多分2年に一度くらい一緒に飲んで、
近況報告と、昔話をする間柄。
もちろん、
私達夫婦がセックスレスなことも知っている。

いつも思う。
誘蛾灯みたいな男。
黙っていても、女の人が寄ってくる。

ルックスはもちろんだけど、とにかく優しい。
とにかくマメ。
私が男なら、
両手をついて教えをこうていただろう。

でも、多分持って生まれたもの。

でも、私は彼に恋したことはなく、彼も同様。
多分、お互いの好みやら何やら知りすぎて、
さらさらそんな気にならなかったのだろう。
若い頃には、男女でもそんな付き合いが成り立つ。

でも今、
私はシュンにとんでもないお願いしようとしている。
でも、やっぱりあれだな。
無謀だな。

長いセックスレスの間に、浮気は考えなかったの?
そう聞かれれば、何百回も考えた。

でも残念ながら私は、道を歩いていて、
見知らぬ男に声かけられるような容姿ではないし。
もし、そんな機会があったら、
喜んでついていったんじゃないかと思うけど。

そして、どんなふうに相手を探していいのか、
術もわかっていなかった。

シュンのことも、正直何回か考えた。
でも知らない人より、知ってる人は何倍もイヤだった。

何より、夫が好きだった。
夫に言えないことはしたくなかった。
キレイゴトかもしれないけど。
でもなんかそれだけは、
心の一番深いトコロにあったと思う。

結局は古いタイプの人間なんだな。

でもとりあえず、久々シュンにメールしてみた。
仕事のお昼休み。

元気ですか?
ご無沙汰してます。
急がないんでお暇が出来たら、ちと会えないかな?
たいしたことじゃないんだけど。
ただちょっと聞いてほしくて。

送信する。

おぉ!
いつでもいいよ。
最近、仕事でお前ん家の近く行ってるし、
晩飯でも食おう。

返信がきた。


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005-オナニー。

最近はオナニーって言わないのかな?
一人エッチとか。
でも私の場合、なんかそんなふうな可愛いモノじゃなかった。

なんていうんだろ。
猛烈にお腹がすいてすいて、今すぐ何か食べないと死んじゃう。
そんな感じの行為。

それは、夫が出かけるのを待ちかねて始まり。
イッたすぐ後に、全然足りなくて、また始まり。
疲れ果てて、やっと眠りについたかと思ったら、
3時過ぎには目が覚めて始まる。
朝、アラームで無理矢理起きたその瞬間から、またしたくなる。

改めて書いてみると、病気。
でも今までの分を、この夏中に取り戻さなきゃいけないみたいに、
私は身体をいじくりまわした。

それまでも、全くしなかったわけじゃない。
たまたま読んだ小説の、エッチなシーンに身体がむずむずしてとか。
でも、乳首とクリトリスをちょっといじって、おしまい。

今はそんな生易しいものじゃあない。
もっと能動的で。
もっと荒々しくて。
私の小さな器官が、全部つぶされて壊されるような行為。

不思議と罪悪感はなかった。
恥ずかしさもこれっぽっちもなかった。

私はただただ、自分の身体を愛してあげたかった。
こんなにも長い間、誰にも触れてもらってない身体。
私が可愛がってあげなきゃ、かわいそ過ぎる。

痩せっぽちで、薄い胸も。
厚みのない小さなお尻も。
もう、男の人に触れられることもないだろう、固い芽も。
頬も耳も首もお腹も腕も、手も。

私は私に甘い。
このタガが外れた気持ちを、抑えようとは思わなかった。
むしろ、気が済むまでやり続ければいい、と思ってた。

夫は、何も知らない。
自分が出かけたあとの、閉め切ったエアコンもない部屋で、
私が毎晩汗まみれ、体液まみれになってることを。
喘ぎまくって、かつては二人で眠っていたベッドの上で、
何も身につけず果てていること。
想像の中で、夜ごと男に犯されて、悦んでいること。

夫はその時間、黙々と働いている。

でもそんな毎日の行為も、私の焦燥感を和らげてはくれなかった。
まぁ、当たり前か。

睡眠不足で、顔つきが変わってきた。
体重も激減した。

そして、怒りは、憎しみは、悲しみは、再び夫にむけられる。
「どうして私に触れてくれないの?」
諦めたのに、言い聞かせたのに、また同じ言葉が繰り返される。
もうふさいだつもりでいた傷は、剥き出しになって前より何倍も痛い。

私は夫と話さなくなった。

もちろん、夫は何も聞かないし咎めない。
またいつものように、嵐が過ぎるまでじっと待つのだろう。
今までも、そうやってやり過ごしてきたように。

彼には、何も望めない。

でも私、しないとダメだ。
誰かとセックスしないとダメになる。

一度でいい。
それを、人生最後にする。
でも、誰と?

高校時代からの友人、シュンの顔が浮かんだ。


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004-セックスレス。

ここ4,5年、私達はセックスレスであることに触れなくなっていた。
と、いうか私は完全に諦めていた。

長く暮らす夫婦なら、余計と相手のことがわかりすぎるほどわかってくる。
夫は、今さら私が泣こうがわめこうが、変わる人間ではない。
よくも悪くも、ブレの一切ない人。

加えて、年頃の娘と、過干渉な私の実母という家族構成では、
おおっぴらに喧嘩も出来ない。

第一、昼間にフルタイムで働く私と夜中に仕事に出てゆく夫では、
接する時間もほんのわずか。
一日をトータルしても、多分20分くらい。

けど、夫の週に一度の休みは、とにかくゆっくりして欲しかった。
好きなサッカーや競馬を見たりで、しんどい一週間をリセットして欲しかった。
私も働いていれば、そんな気持ちは良くわかるから。
だから、娘の学校の話とか、私の仕事の話とか、
他愛ないことしか、努めて話さなかった。

でも今にして思うと、もっと早くにぶちまけて話しておくべきだったんだろう。

あんなことになる前にね。

久しぶりに私は聞いみた。

「ねぇ、私達、もうこれから一生することないのかな?」

夫はのんびり応える。
「多分ないんじゃない。俺、もうダメだし」

そっかぁ。
しばらくこのテの話をしない間に、そういうことになってたか。
まぁ、年齢的にもおかしくはないけどね。

けど、釈然としない。
だいたい夫は、セックスレスだから、せめてスキンシップくらい、と言う気も全くない。
要するに、したくないことはしない人なのだ。
さすが、末っ子長男。
私は、変なところで妙に感心した。
そんな占いが流行っていた頃だった。

イビキと寝言のひどい母の近くでは寝られないので、
広くない家では、私は夫が出かけた後のベッドで一人で寝る。

今にして思えば、これも良くなかった。

二年前までは、中学生の娘と寝ていた。
で、高校生になったのを機に、
私は夫が夜11時を過ぎに出てゆくのを待って横になる、というパターンになった。

思うけど、夫婦って一緒に寝たほうが、絶対いいんじゃないかな。
こんな私の意見じゃ、なんの説得力もないけど。

もしセックスレスでも、毎晩隣で一緒に眠って、お互いの体温感じたり、
寝息聞いたりするだけで、なんらかのつながり、持てたんじゃないかな。

ただ残念ながら私達は、こうなる前も別居してたり、
夫が住み込みで働いたりで、何年も一緒に寝ていない。

嫁入り道具で買ったダブルベッドに二人で眠ったのは、
結婚後ほんの数ヶ月だった。

2010年は、113年ぶりと言われる猛暑になった。

終わることを知らないかのように、熱い熱い夜。

私は夫が出かけたあとのベッドで、取り付かれたようにオナニーに耽った。

しないではいられなかった。

そう。

もう自分では抑え切れないくらいの性欲が、49歳の夏に、堰をきって溢れだしてきた。


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003-噴き出した想い。

爆弾は、思ったより破壊力があった。
長い間、固くかけていた鍵が、あの一言で壊されたんだと思う。
多分。

セックスレスだった18年の気持ちが、少しずつ私の中から吐き出されてくる。

最初は自嘲。
18年も、ずっと泣いて我慢してきたのに、ヤリマンなんて、誰の話?
なんか私、馬鹿みたいじゃない?
やってらんないよね。

知ってた?
あんまりにもセックスしないでいると、夢も再現してくれなくなる。
エッチな夢を見ても、記憶のかけらも残ってないから、脳も完全にお手上げ。
いつもうやむやな終わり方されちゃって、もはや夢の中でさえセックス出来ない。

恋愛映画や恋愛小説からも、意識的に遠ざかった。
だって、見ているだけで、読んでいるだけで、悲しくなるから。
腹が立つから。

カップルが、夫婦が、幸せそうに抱き合ったり、キスしたり、セックスしたり。
もう、私にはどれもこれも無縁だったから。

今も忘れられない、出来事がある。

娘が小学4年の頃、クラスメイトのお母さんが妊娠した。
すごく太ってて、目鼻がお肉に埋もれてるような、愛嬌のあるママ。

あー、妊娠するってことは、ちゃんとセックスしてるんだよね。
当たり前だけど、うらやましいなぁ。
心底、うらやましい。

もう何年も昔のことなのに、その時の悲しくて痛い気持ち、
昨日のことみたいに思い出せる。

夫は私を大切に思ってくれる。
けど、ありとあらゆるスキンシップが、得意じゃないし、
恥ずかしいし、したくないらしい。

もちろん、たまに出かけて人目がなければ、手くらいは繋いでくれる。
でも、自分からは絶対にしない。
キスも、私が無理矢理唇をくっつけるだけ。
ただの軽い衝突。

私も夫が本当に好きだ。
一目惚れしたくらいだから、顔はもちろん、
長身でガッチリした身体つきも、優しい声も。
いたって穏やかで、真面目な性格も。

スキンシップこそないけれど、
冬の陽射しみたいにあったかい愛情をいつも私に注いでくれる。

だから、ここまで一緒に生きてきた。
だから、セックスがなくても我慢してきた。
夫がしたくないなら、仕方ないと思っていた。

でも、気づいたら、こんなに時間がたっちゃった。

もうすぐ50歳。
遠からず生理もなくなる。

私はいったい、幾つまで生きられるのかな?

このままだと、セックスしないで死んじゃうんだな。

なんか、淋しいな。

セックスって、どんなものだった?

楽しいの?
気持ちいいの?
好きな人とすると、シアワセなの?
私は、もう何も思い出せない。

したい、と思う気持ちに、長い間鍵をかけていたから。

でも、

したい。
しておきたい。

セックスがしたい。


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002-きっかけ。

私の性欲は、長い間眠っていた。
理性とか、諦めとか、そんなモノにずっと眠らされてた。

目覚めたきっかけは、仲の良い後輩に言われた一言。
多分。

学生時代のサークルの後輩達と、同窓会を機に集まるようになった。
食べ物やお酒を持ち寄って、泊まりがけでおしゃべりする、気のおけない会。

その日は確か男子も含め、7,8人で飲んでいた。

そして、かなり酔いもまわった頃、一人が無邪気に唐突にこう聞いてきた。

「そう言えばぁ、ミオコさんて、ヤリマンだったんですか?」

文字通り、空気が固まった。

ヤリマン?
ヤリマンって、どういう意味だっけ?
あまりに突然な質問に頭が混乱した。

そして、恐る恐る大昔の記憶を引っ張り出してみた。

確かにあった。
場所や時期は定かじゃないけど、酔って雑魚寝していたとき、
後輩の男の子に迫られて、面倒くさいし、いいよ、と言ったこと。
そんなことが、二度ほどあった。

もちろん、詳細なんて微塵も覚えていない。
でも、まさか、そんな大昔のことを、30年近くたとうとしている、
しかもこんな席で言われようとは。

けど、追い打ちをかけるように、別のコが言う。
「あぁ、そういえばソレ、私も聞いたことあります」

じゃあ、なに?
平たく言えば、みんな長い間、そう思ってたの?

「あ~、まぁ、そんなこともあったよねぇ」
なんとか返す。

場を取り繕おうと、部長をしていた男の子が口を開く。
「それは昔のコトで、今は旦那さん一筋ですよね? ラブラブなんでしょ?」

「旦那とはね、ちょっと待って」
私は生真面目に、指折り数えた。

13年までは確かに数えていた。でも、それからは、数えることすらしていない。

「えーっと、18年してない」

今度こそ、座がフリーズした。

そのときの、私の気持ちを、言葉にするのは難しい。

あー、もうそんなにたっちゃってるんだ。とか。
にしても、若気の至りを、まさかこんな場で暴露されるとは。とか。
〇〇は先輩と慕いながら、その実こんなとんでもないこと秘めてたのか。とか。

でも、もう私、18年もしてないのか。
自分が一番驚いた。

その後も〇〇の爆弾発言は続き、みんなそれぞれ爆弾を投下され、
ひいひい言っていた。

当の〇〇(既婚、子アリ)は、
さっき思いやり発言をしてくれた彼(恰幅のいいおっさん)がずっと好きだったようで、
みんなの冷たい視線もものともせずに、隣に座ってペッタリくっついている。

腹もたったけど、羨ましかった。

きっと、ご主人とも仲良しなんだろな、普通に。
セックスレスなんてことなく。

私は仕返しに二人の写真を撮る。
「旦那に送ってやろ~」
飲んで笑って、宴会はおしまい。

でも、今にして思うと、この爆弾が私を変えた。


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