006-シュン。

シュンと会ったのは、15歳の4月だった。
まだバンカラ(多分、若い人は知らないね)
な名残のある地方の高校で。

私は地元だし、制服もなく圧倒的に男のコの多い、
憧れの学校に入れた嬉しさで、舞い上がっていた。
けど彼は、親の都合で
急きょこの学校に入ることになったらしい。
今にして思えば、
彼が青春真っ只中で都会から田舎に来なきゃならなくなったのは、
ホントにお気の毒様としかいいようがない。
不本意に田舎で過ごすことになった彼は、
最初から少し屈折してて、浮いていた。

初めて部室に行ったとき、
何故か彼だけがぽつねんと座ってた。
私は彼を先輩だと思い込んで、
緊張して馬鹿丁寧に挨拶をした。

「よろしくお願いします!」
「あっ、俺一年だから」
「…」

私達は3年間を、
一緒に新聞記事書いたり、
油絵描いたりして過ごした。
お互いの恋の悩みも、たくさん相談しあった。

長身、長髪、派手な目鼻立ち。
ガリ勉眼鏡が標準仕様の学校では、
浮きまくってたような気がする。

でも、34年もの間、ずっと友達。
大切でかけがえのない友達。

別々の大学に入ってからは、
お互いの知り合いに声かけて合コンしたり。
それぞれの結婚式にも参列したし。
ここ数年は多分2年に一度くらい一緒に飲んで、
近況報告と、昔話をする間柄。
もちろん、
私達夫婦がセックスレスなことも知っている。

いつも思う。
誘蛾灯みたいな男。
黙っていても、女の人が寄ってくる。

ルックスはもちろんだけど、とにかく優しい。
とにかくマメ。
私が男なら、
両手をついて教えをこうていただろう。

でも、多分持って生まれたもの。

でも、私は彼に恋したことはなく、彼も同様。
多分、お互いの好みやら何やら知りすぎて、
さらさらそんな気にならなかったのだろう。
若い頃には、男女でもそんな付き合いが成り立つ。

でも今、
私はシュンにとんでもないお願いしようとしている。
でも、やっぱりあれだな。
無謀だな。

長いセックスレスの間に、浮気は考えなかったの?
そう聞かれれば、何百回も考えた。

でも残念ながら私は、道を歩いていて、
見知らぬ男に声かけられるような容姿ではないし。
もし、そんな機会があったら、
喜んでついていったんじゃないかと思うけど。

そして、どんなふうに相手を探していいのか、
術もわかっていなかった。

シュンのことも、正直何回か考えた。
でも知らない人より、知ってる人は何倍もイヤだった。

何より、夫が好きだった。
夫に言えないことはしたくなかった。
キレイゴトかもしれないけど。
でもなんかそれだけは、
心の一番深いトコロにあったと思う。

結局は古いタイプの人間なんだな。

でもとりあえず、久々シュンにメールしてみた。
仕事のお昼休み。

元気ですか?
ご無沙汰してます。
急がないんでお暇が出来たら、ちと会えないかな?
たいしたことじゃないんだけど。
ただちょっと聞いてほしくて。

送信する。

おぉ!
いつでもいいよ。
最近、仕事でお前ん家の近く行ってるし、
晩飯でも食おう。

返信がきた。


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