005-オナニー。

最近はオナニーって言わないのかな?
一人エッチとか。
でも私の場合、なんかそんなふうな可愛いモノじゃなかった。

なんていうんだろ。
猛烈にお腹がすいてすいて、今すぐ何か食べないと死んじゃう。
そんな感じの行為。

それは、夫が出かけるのを待ちかねて始まり。
イッたすぐ後に、全然足りなくて、また始まり。
疲れ果てて、やっと眠りについたかと思ったら、
3時過ぎには目が覚めて始まる。
朝、アラームで無理矢理起きたその瞬間から、またしたくなる。

改めて書いてみると、病気。
でも今までの分を、この夏中に取り戻さなきゃいけないみたいに、
私は身体をいじくりまわした。

それまでも、全くしなかったわけじゃない。
たまたま読んだ小説の、エッチなシーンに身体がむずむずしてとか。
でも、乳首とクリトリスをちょっといじって、おしまい。

今はそんな生易しいものじゃあない。
もっと能動的で。
もっと荒々しくて。
私の小さな器官が、全部つぶされて壊されるような行為。

不思議と罪悪感はなかった。
恥ずかしさもこれっぽっちもなかった。

私はただただ、自分の身体を愛してあげたかった。
こんなにも長い間、誰にも触れてもらってない身体。
私が可愛がってあげなきゃ、かわいそ過ぎる。

痩せっぽちで、薄い胸も。
厚みのない小さなお尻も。
もう、男の人に触れられることもないだろう、固い芽も。
頬も耳も首もお腹も腕も、手も。

私は私に甘い。
このタガが外れた気持ちを、抑えようとは思わなかった。
むしろ、気が済むまでやり続ければいい、と思ってた。

夫は、何も知らない。
自分が出かけたあとの、閉め切ったエアコンもない部屋で、
私が毎晩汗まみれ、体液まみれになってることを。
喘ぎまくって、かつては二人で眠っていたベッドの上で、
何も身につけず果てていること。
想像の中で、夜ごと男に犯されて、悦んでいること。

夫はその時間、黙々と働いている。

でもそんな毎日の行為も、私の焦燥感を和らげてはくれなかった。
まぁ、当たり前か。

睡眠不足で、顔つきが変わってきた。
体重も激減した。

そして、怒りは、憎しみは、悲しみは、再び夫にむけられる。
「どうして私に触れてくれないの?」
諦めたのに、言い聞かせたのに、また同じ言葉が繰り返される。
もうふさいだつもりでいた傷は、剥き出しになって前より何倍も痛い。

私は夫と話さなくなった。

もちろん、夫は何も聞かないし咎めない。
またいつものように、嵐が過ぎるまでじっと待つのだろう。
今までも、そうやってやり過ごしてきたように。

彼には、何も望めない。

でも私、しないとダメだ。
誰かとセックスしないとダメになる。

一度でいい。
それを、人生最後にする。
でも、誰と?

高校時代からの友人、シュンの顔が浮かんだ。


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