ここ4,5年、私達はセックスレスであることに触れなくなっていた。
と、いうか私は完全に諦めていた。
長く暮らす夫婦なら、余計と相手のことがわかりすぎるほどわかってくる。
夫は、今さら私が泣こうがわめこうが、変わる人間ではない。
よくも悪くも、ブレの一切ない人。
加えて、年頃の娘と、過干渉な私の実母という家族構成では、
おおっぴらに喧嘩も出来ない。
第一、昼間にフルタイムで働く私と夜中に仕事に出てゆく夫では、
接する時間もほんのわずか。
一日をトータルしても、多分20分くらい。
けど、夫の週に一度の休みは、とにかくゆっくりして欲しかった。
好きなサッカーや競馬を見たりで、しんどい一週間をリセットして欲しかった。
私も働いていれば、そんな気持ちは良くわかるから。
だから、娘の学校の話とか、私の仕事の話とか、
他愛ないことしか、努めて話さなかった。
でも今にして思うと、もっと早くにぶちまけて話しておくべきだったんだろう。
あんなことになる前にね。
久しぶりに私は聞いみた。
「ねぇ、私達、もうこれから一生することないのかな?」
夫はのんびり応える。
「多分ないんじゃない。俺、もうダメだし」
そっかぁ。
しばらくこのテの話をしない間に、そういうことになってたか。
まぁ、年齢的にもおかしくはないけどね。
けど、釈然としない。
だいたい夫は、セックスレスだから、せめてスキンシップくらい、と言う気も全くない。
要するに、したくないことはしない人なのだ。
さすが、末っ子長男。
私は、変なところで妙に感心した。
そんな占いが流行っていた頃だった。
イビキと寝言のひどい母の近くでは寝られないので、
広くない家では、私は夫が出かけた後のベッドで一人で寝る。
今にして思えば、これも良くなかった。
二年前までは、中学生の娘と寝ていた。
で、高校生になったのを機に、
私は夫が夜11時を過ぎに出てゆくのを待って横になる、というパターンになった。
思うけど、夫婦って一緒に寝たほうが、絶対いいんじゃないかな。
こんな私の意見じゃ、なんの説得力もないけど。
もしセックスレスでも、毎晩隣で一緒に眠って、お互いの体温感じたり、
寝息聞いたりするだけで、なんらかのつながり、持てたんじゃないかな。
ただ残念ながら私達は、こうなる前も別居してたり、
夫が住み込みで働いたりで、何年も一緒に寝ていない。
嫁入り道具で買ったダブルベッドに二人で眠ったのは、
結婚後ほんの数ヶ月だった。
2010年は、113年ぶりと言われる猛暑になった。
終わることを知らないかのように、熱い熱い夜。
私は夫が出かけたあとのベッドで、取り付かれたようにオナニーに耽った。
しないではいられなかった。
そう。
もう自分では抑え切れないくらいの性欲が、49歳の夏に、堰をきって溢れだしてきた。