002-きっかけ。

私の性欲は、長い間眠っていた。
理性とか、諦めとか、そんなモノにずっと眠らされてた。

目覚めたきっかけは、仲の良い後輩に言われた一言。
多分。

学生時代のサークルの後輩達と、同窓会を機に集まるようになった。
食べ物やお酒を持ち寄って、泊まりがけでおしゃべりする、気のおけない会。

その日は確か男子も含め、7,8人で飲んでいた。

そして、かなり酔いもまわった頃、一人が無邪気に唐突にこう聞いてきた。

「そう言えばぁ、ミオコさんて、ヤリマンだったんですか?」

文字通り、空気が固まった。

ヤリマン?
ヤリマンって、どういう意味だっけ?
あまりに突然な質問に頭が混乱した。

そして、恐る恐る大昔の記憶を引っ張り出してみた。

確かにあった。
場所や時期は定かじゃないけど、酔って雑魚寝していたとき、
後輩の男の子に迫られて、面倒くさいし、いいよ、と言ったこと。
そんなことが、二度ほどあった。

もちろん、詳細なんて微塵も覚えていない。
でも、まさか、そんな大昔のことを、30年近くたとうとしている、
しかもこんな席で言われようとは。

けど、追い打ちをかけるように、別のコが言う。
「あぁ、そういえばソレ、私も聞いたことあります」

じゃあ、なに?
平たく言えば、みんな長い間、そう思ってたの?

「あ~、まぁ、そんなこともあったよねぇ」
なんとか返す。

場を取り繕おうと、部長をしていた男の子が口を開く。
「それは昔のコトで、今は旦那さん一筋ですよね? ラブラブなんでしょ?」

「旦那とはね、ちょっと待って」
私は生真面目に、指折り数えた。

13年までは確かに数えていた。でも、それからは、数えることすらしていない。

「えーっと、18年してない」

今度こそ、座がフリーズした。

そのときの、私の気持ちを、言葉にするのは難しい。

あー、もうそんなにたっちゃってるんだ。とか。
にしても、若気の至りを、まさかこんな場で暴露されるとは。とか。
〇〇は先輩と慕いながら、その実こんなとんでもないこと秘めてたのか。とか。

でも、もう私、18年もしてないのか。
自分が一番驚いた。

その後も〇〇の爆弾発言は続き、みんなそれぞれ爆弾を投下され、
ひいひい言っていた。

当の〇〇(既婚、子アリ)は、
さっき思いやり発言をしてくれた彼(恰幅のいいおっさん)がずっと好きだったようで、
みんなの冷たい視線もものともせずに、隣に座ってペッタリくっついている。

腹もたったけど、羨ましかった。

きっと、ご主人とも仲良しなんだろな、普通に。
セックスレスなんてことなく。

私は仕返しに二人の写真を撮る。
「旦那に送ってやろ~」
飲んで笑って、宴会はおしまい。

でも、今にして思うと、この爆弾が私を変えた。


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