031-本気。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

50過ぎたオンナにとって、
年若いオトコの褒め言葉は、麻薬に等しい。

「僕は、ミオコさんの性格も顔もスタイルも、全部が好き」

「笑顔が可愛くて、時々、年上なのを忘れちゃいます」

「抱きしめてるとき、キスしてるとき、本当に幸せ」

私が自分の身体を貧弱呼ばわりすると、
ムキになって怒ってくれる。

「ミオコさんの身体は、スレンダーって言うんだよ」

アツシさんの言ってくれる言葉のすべてが、
長い間恋することを忘れていたいた私には、あまりにも甘すぎた。
彼の言葉が、態度が、何よりセックスが私を瞬く間にかえてゆく。
やっと巡りあえた、年下の恋人。
朝から晩まで、彼のことしか考えられない。

毎日のメールの内容も、どんどん過激になってゆく。

《僕と会えないときは、僕を思ってオナニーしてね》

《昨日も、アツシさんのこと考えながらいっぱいしたよ》

《早くミオコさんに会いたい》

《私も、我慢出来ない》

誰にも見せられない、欲情したメールのやりとり。
二人の間で、いくつかの取り決めが出来ていた。
私のメールに、一日一回は返信してほしい。
ただ、クルマで外回りのアツシさんは、
一日の仕事が終わった時でかまわない。
なるべく予定を合わせて、月2回は会えるようにする。

けれども、最初のうちこそうまくタイミングがあったものの、
二人ともフルタイムで仕事をしているうえに、
アツシさんの仕事は、私が考えていた以上にハードだった。
働き盛りの40代だから仕方ないんだけど。
メールを待つ時間がどんどん苦痛になってゆく。
9時、そろそろメール来る頃かなぁ。
10時、今日は忙しいのかなぁ。
11時、アツシさん、なんかあったんじゃないかな。
時計ばかりが気になって、やたらと落ち着かない。
とにかくメールがないと、一日が終われない。

《お疲れ様、今やっと終わりました!》

アツシさんからのメールが届いて、初めて安堵する。
アツシさんと、ちょっとでも話せた嬉しさ。
アツシさんが、一日無事に終えられた喜び。
そんな気持ちを噛み締めながら、長い一日がやっと終わる。

〈これって、まるで恋じゃない〉

アツシさんに夢中になりすぎて、本末転倒なコトになっていた。
もちろん、好きになれる人は絶対条件だったけど、
私はこんなに切ない恋がしたかったんじゃない。
もっとドライな気持ちで、セックスする相手を探していただけなのに。
メール待ちで頭がいっぱいで、何も手につかないなんて。馬鹿みたい。
でも、真面目で誠実な人柄にどんどん惹かれていく気持ちが止まらない。
アツシさんと会うようになってから、少しずつ身体にも自信が持ててきた。
けど長い間、自分で欠陥品と思い込ませてきた気持ちは、容易には消えない。
そんな気持ちをメールにすると、アツシさんはすぐに返事をくれる。

《ミオコさんは、欠陥品なんかじゃないですよ》

《二度目に会ったとき、エレベーターの中で、僕のがどうなってましたか?》

《ミオコさんが欠陥品なら、あんなふうにならないよね(笑)》

ただただ、嬉しかった。
思うように会えないうえに、返信が来なかった日もあった。
私は、ずっとメールを待ち続けて心配していたことを言うと、
翌日、長いメールが届いた。

《心配かけてすみません》

《会えない理由を仕事にかこつけて、あれこれ言ってたけど》

《ミオコさんの気持ち考えたら、僕の言い訳でしかないですね》

アツシさんは、おこずかいの額と内訳を包み隠さず書いてくれた。
男の人にとっては、本当に言いたくないことだったと思う。
お子さんが3人で、住宅ローン払ってて、
余裕のある人なんてそうそういない。
そんなことは、私だって薄々はわかっていた。
でも、少しでも多くアツシさんに会いたがる私に、正直に話してくれた。
長い長いメールだった。

《僕の靴は底が薄くて、背伸びしてもすぐ無理がきちゃうみたいです》

涙が止まらなくなってしまった。
誠実で、正直で、とにかくまっすぐな男。
自分でも「昭和な男」と言って笑う。
嘘がつけなくて、一本気な人。
私なんかに、もっと上手に嘘をついても良かったのに。
でも、私はそんなアツシさんの不器用さが、心底愛おしかった。
だけど、出会ってからまもなく半年がたとうとしている時、
ぷっつりとメールが来なくなった。

カテゴリー: diary | コメントする

030-アツシ。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

ネットで相手探して、会ったりしたことある人、多いよね。
ただ、過程は楽しいけど、実際に会うのはリスクもある。
特に期待が大きかったときは、ダメージが…。
当然だけど、続けていると自己嫌悪に陥る。

〈ワタシ、いったい何やってんだろ?〉

〈こんな思いまでしてセックスしたいの?〉

けれども、どこかで信じていた。
絶対に出会える。
「この人!」
そう思える人に…。

それまでは、メッセージをくれた人とやり取りして、会っていた。
でも、やっぱり自分から積極的に探さないと。

気持ちを切り替えて、あちらこちらのプロフィールを覗いてみた。
ペンネーム、自己紹介、アプリ、つぶやき。
一人一人の個性が、ものすごく良くわかる。

そんな中、あるプロフィールに目が止まった。
たいしたことが、書いてあるわけではなかった。
ハンドルネームも、なんかまったりしてる。

でも読んだ瞬間、私はメッセージを打っていた。
こんなことは初めてだった。

直感が働いた。

アツシさん。
9歳下の家電メーカーの営業マン。
既婚で、お子さんが3人。

連休中だったせいか、返事はすぐに来た。
文章もきちんとしていて、それがやたら嬉しかった。

何度かやり取りを重ねて、瞬く間に距離が狭まってゆく。
かつてないくらいの速さだった。

アツシさんも、長くセックスレスらしい。
奥さんとの仲もあまりうまくいっていない。
けれど、離婚とかは考えていないという。
正直にいろいろ打ち明けてくれるところも、好感が持てた。

送ってくれた写真は外回りの仕事らしく、日焼けしていて精悍だった。
私の写真も、なぜだか気に入ってもらえたみたいだ。

《もしも、初めて会ったとき、僕のことも気に入ってもらえたら、
ミオコさんのこと、抱きしめてもいいですか?》

その言葉が、涙が出るくらい嬉しかった。

私も抱きしめて欲しかった。

みんな、誰かを抱きしめたかったり、抱きしめてほしかったり。
けど結婚していたとしても、相手とセックスレスなら、それは叶わない。
お互いの身体の温もり感じたくても、行きずりの誰かに頼めない。
お金を払う関係では、心からは満たされない。

私もアツシさんに抱きしめて欲しかった。
一刻でも早く。

そして、初めてのメールから一週間。
私はアツシさんに会った。

アツシさんは、笑顔の優しい人だった。
第一印象は、なにかスポーツしてたのかな?だった。
聞くと、ずっと野球をしていたと言う。

ホテルの部屋に入ると、本当に嬉しそうに私を抱きしめてくれた。
それだけで、心底嬉しかった。

メールで約束していた通り、ビールで乾杯して。
私の着ているものを、丁寧に脱がせてくれて。
一緒にシャワーを浴びて。

キスする。
アツシさんの唇は柔らかかった。
私の唇をついばむように、長くて深い、優しいキスだった。

〈そう、キスってこういうものだったんだ〉
私は、本当に幸せな気持ちになった。

アツシさんのセックスは、素敵だった。

けど、私が一番驚いたのは、彼が私の希望を聞いてくれること。
古い人間だから、そう思うのかもしれないけど、
なんとなくセックスって、男の人主導でするもの、って思ってた。

でも、アツシさんは、私の気持ちを確かめる。

「ミオコさん、どんなふうにフィニッシュしたい?」
「正上位?バック?」

そんなこと聞かれたことないから、答えに困る。

「…どっちでも」

セックスしてる最中も、相手の様子を気遣う。

「ミオコさん、疲れた?休む?」

私がうなずくと、すぐに休息をとってくれる。

二人で、ビールを飲み、一服しながら、いろいろな話をする。

アツシさんは、若い頃相当遊んだんだみたい。

「何人くらい?」
「わかんない。覚えてないくらい」
「すごいね」
「テレクラとか、ゲーム感覚ではまってたこともあったし

男の人が羨ましくなる。
今はそうでもないけど、女がそういうことする場は、圧倒的に少ない。

「彼女がいない夏とか、すれ違う薄着の女性にも欲情してたよ」
笑いながら、なんか爽やかに言う。

そうなんだ。
アツシさんって、たぶん性欲すごく強くて。
だけど、外見の爽やかさと、カラッとした明るさで、いやらしさが全然ない。

こんなふうな男もいるんだなぁ。
私には、なにもかもが新鮮だった。

お互いの仕事のこと、家庭のこと、話も尽きない。

「あっ、もうこんな時間だ」

笑いあって、も一度ベッドに戻る。
二人とも、人間からケモノに戻って求めあう。

セックスって、こういうモノだったんだぁ。

カテゴリー: diary | コメントする

029-顛末。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

とは言ったものの、
正直、思い出したくないことがほとんどというか全部で。
加えて、最近新しい仕事に就き、疲労もマックス。
なかなか話が進まない。

でもね、私は「私の今」を書きたいから。
そこにたどり着くまでのしんどい道のりも、書かないとね。

最初にやり取りした人は、同じように読書好きで。
メールや電話の感じも好感持てた、二つ下の人。

ただ、実際に会ったら、なんていうのかな、
歳をとってくると人間って、性根か顔に出るでしょ。
だから、待ち合わせて最初に顔見た途端、後悔した。

あきらかに人相が良くない。
例えると、すごく悪い南こうせつ、って感じ。
お互いに写真の交換はしてたけど、むこうも落胆してるようだった。

でも、帰るわけにも行かないし、とりあえず近くの居酒屋で飲んだけど。
話をしてても自分のことばかりで、相手の話はスルーするタイプ。

今さらだけど、ここで帰れば良かったのに、
ビギナーな私は、口実みつけて帰るとこまで、考えが及ばなかった。

ホテルに入ったら、予想通り典型的な俺様。
帰りたい、と切実に思ったけど、キレられたら怖いし。

もちろん、セックスは乱暴で最低で。
私は、この人の奥さんに心の底から同情した。
まぁ、ネットで知り合ったような相手だから、ひどいこともするんだろうな。

忍耐、としかいいようのない時間が終わり、
私は、これがセックスなら一生しなくていいや、と思った。

でも、この頃の私は相当たくましかった。
絶対に、相手をみつけたかった。
どこかに、必ずいると思ってた。

私が心の底から好きになれて、
私のことも大切に思ってくれて、
気持ちの通いあうセックスが出来る人が。

それに今やめたら、こんな思い出したくもないセックスが、
人生最後のセックスになってしまう。
それだけは、なにがなんでも嫌だ。

次は大分年上の人に会ってみた。
印象は歳のいった、こぶ平という感じで、人なつっこい印象。
けど、軽く飲んだあとホテルに行ってみたが、
飲み過ぎた、とかで勃たなくて恐縮されてしまった。

まぁ、正直それは私にとってはどっちでも良くて。
ただ、なんとなくこの人は違う気がした。
人あたりも良いし、聞けば職場でもモテているらしい。
多分、そうなんだろうと思う。

でも、なんていうのかな。
次は頑張るから、いつでも連絡して、と言われたけど。
この人は、別段私を必要としてはいない。
そう思った。

だんだんに、ひとつずつはっきりしてくる。
私は、私とセックスしてくれる相手を探しているけど、
どうせなら、私を必要としてくれる人とセックスがしたい。

三回目となると、いろいろ面倒になって、写真も見ないで会ってみた。
…TVで、時折見かける濃い顔の俳優に似た人が待ち合わせ場所にいた。
だだし、私の嫌いなタイプの。
けど、この人は本当に真面目でいい人だった。
年収も多いようだし、お洒落なお店も予約してくれていた。

ただ、話が弾まない。
まったくときめかない。

50過ぎてんだから、文句ばっかり言ってんな!
と言われるかもしれないけど。
この先も、長く付き合っていける相手に巡り会いたい。

だから一緒にいて、話をして、気持ちが自然に通いあう、って大事な条件だ。
ただし、この人はセックスの相性はなかなか良かった。
私ごときがいうのもなんだけど、きっと上手な部類にはいるんだろうな。

向こうも気にいってくれたようだったが、いろいろと残念。

このあたりで、初心に帰って、念を入れてから会うようにした。
メール、電話、写真。
会うまでに、十分に時間をとってやり取りしてみた。

次の人には、今までで一番期待をかけていた。
同じように長くセックスレスで、お互いの悩みも打ち明けあった。
何通もメールをやり取りして、かけてくれる言葉のひとつひとつが優しかった。

今度こそ、巡りあえたかも。
そう思って待ち合わせ場所へ急ぐ。

けど、世の中はやっぱり甘くないね。
垢抜けないフォークシンガーみたいな人が…いた。
えーっ!この人ですかぁ!

彼は、私が初めてみるM男クンだった。
この回については、省略させてほしい。

さすがの私も、彼に会ったあとは相当へこんだ。
気持ちも身体も、擦り減ってゆく感じ。
しばらく、次のアクションを起こす元気は出なかった。

ちょっと休もう。

カテゴリー: diary | コメントする

028-回想

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

それからの私は、毎日のようにSNSのあちらこちらを覗いて廻った。
その中の何人かからメッセージが来て、
良さそうな人とはしばらくやり取りしてみた。

やったことがある人はわかると思うけど、本当に楽しい。
どんどん相手の情報が増えてきて、人柄やら、生活背景やらが見えてきて。
何年かぶりの、恋みたいな気持ちにときめいて。

そんなある日、確か夫が休みでなんとなく二人でいたとき。
いつになく真面目に、私に言った。

「…俺は、お前と一緒になって良かったと思ってる」

「だからどちらかが死ぬまで、ずっと一緒だから」

思わず、夫の顔を見る。

無口なこの人が、こんなことを口に出すなんて。
いったいいつ以来なのか、とっさに思い出せない。
そう、結婚式の最後のスピーチだったろうか。

「こんなことを言うのは、もうないでしょうが」

「多分、一生口にしないと思いますが」

確か前置きがやたらに長くて、何を言い出すのかと当惑した。
思い出して、苦笑いしてしまう。

「私はいいパートナーに巡り会えて、しあわせです!」
会場がワッと盛り上がって、拍手に包まれた。

7年近くに及ぶ、長い付き合いだったけど、
こんなことを言ってもらうのは初めてだった。
しかも、集まってくれたみんなの前で。
ただただ嬉しくて、誇らしかった。

あの時以来、初めて聞いた夫の気持ちだった。

心に染みた。

あれから19年がたったけど。
私はこの人と一緒になって、本当に良かったと思っている。
今でも心の底から、夫のことが好きだ。

けど、十分すぎるくらいその気持ちがあっても、
夫がしたくないからセックスは我慢する、はおかしい。
身体に変調が出るほど、私はこの不自然な状態に耐えてきた。

だから今、二人で話し合って、こういう選択をする。

世間一般からしたら、おかしな夫婦かもしれない。

他の男とのセックスを許す夫と。
セックスしてくれる相手を探す妻と。

けど、18年間きちんと向き合うことなくきてしまったこの課題は、
今こそ、解決しなければならない。

〈このままでは私はダメになる〉

そう訴えた私に、夫は返答してくれた。

だから、もう足は止めない。

でも、
夫が言ってくれた言葉は忘れない。
胸に刻み込む。

私はネットで相手を探し続けた。
そうはいっても、見知らぬ相手に会うまでには慎重をきした。

出張ホスト君は、一応そういう組織に所属しているプロだけど、
ネット上には、当然いろいろな人がいるし。
やり取りして相手を見極めるのは、自分にかかってくる。

だから、最初はSNS上でしばらくメッセージをやり取りして。
安心できそうな人なら、次にアドレスを教え合う。
で、電話番号や写真を、双方で交換しあう。

だけど、今だから言えるけど、
念をいれたからうまくいくわけじゃない。
メールや電話のやり取りがいい感じでも、それは保証にならない。
さらに言えば、実際に会って飲んで話が弾んでも、安心できない。

まぁ、みんなわかってると思うけど。
50歳を迎えてから、ネットでセックスする相手を探そう!
なんて思い立った私は、すべてが手探りだった。

正直、この頃のことは書かないですむならスルーしたい。

当然だけど「書く」ということは、当時に気持ちを戻して、
そのときのリアルな感情を呼び覚ます行為だから。
想像つくとは思うけど、記憶に削除機能ついてたらソッコーで消してた。
大半がそんなこと。
けど、そんなふうな嫌な目にあったことも、きちんと残しておかないとね。
それをちゃんと書いてこそ、今の自分があるんだからね。

私がこれを書いているのは、今の自分を知ってほしいから。
だから、その過程も隠さないで書く。

カテゴリー: diary | コメントする

027-スタート。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

18年もの長い間、誰ともセックスしなかったのには、
当然だけどいくつか理由がある。
えっ?ホスト君としたじゃん、は、ちょっとおいといて。

ひとつにはやっぱり夫が好きだったから。
操をたてるなんて古臭いかもしれないけど、
夫に言えないことはしない、そう思っていた。
そして呑気な話だけど、いつかは出来るんじゃないか、とも思ってた。

ふたつめには、自分の容姿に自信がなかった。
浮気なんて、他人に見せられる身体の持ち主がするもんだと思っていた。
道を歩いていて、男に声かけられるようなヒト限定だと思っていた。

そして何より、どこでどう知りあえばいいのか、わからなかった。
思い詰めた去年の私は、出会い系サイトを覗いてみたり、
出張ホスト君に会ってみたりもしたけど、
なんだか懲り懲りしただけ。

だから、同じようにセックスレスに悩む人と話したくても、
どこで知り合ったらいいか、皆目見当がつかなかった。

けど、そんな鈍い私でも、ケンジさんとのやり取りで、
SNSは出会いの場なんだ!って気づいた。
ちょっと遅いけど…。

だとしたら、
そうだとしたら、
私は誰かに巡り会えるかもしれない。

夫は他の男としても良いと言う。
だったら、操は関係なくなるよね。

容姿も「この年齢にしたら…」をつけたら、なんとかなるかもしれない。
ホスト君や夫も褒めてくれたし、少しは自信持ってもいいのかも。
最近、ニーズは細分化しているらしいし、
ひょっとして貧弱な身体がタイプな人もいるかもしれない。

なんか、ひとつずつクリア?

本当は、付き合うほどに優しさの伝わってくる、ケンジさんが良かった。
私が仕事でヘマして落ち込んでいるとき、
熱っぽくて朝から寝ついているとき。
そんな時、ケンジさんはいつも暖かいメールをくれた。

その文章は、決して上手だったり気がきいていたりではないけど。
彼の素朴な実直さは、本当に嬉しかった。

ただ、残念ながら彼と会うのは難しい。

でも、私は誰かに抱いてほしかった。
私の望みはセックスをすること。
そして、セックスってこんなに幸せなものなんだって思うこと。

それを知らないで死ぬのは嫌だ。
このまんま、歪んだ憧れや、恐怖感、
自分に対するコンプレックスを抱えたまま死にたくない。

好きな人と愛し愛されて、
裸になっていっぱい抱き合って、
セックスって素敵なものなんだって、
それを知ってから死にたい。
知らないで、絶対に死にたくない。

〈近くに住んでいて、会いやすい人〉
〈やっぱり既婚の人?〉
毎日、通勤途中で妄想するだけで楽しかった。

ただ、やっぱりもう一度だけ夫に聞こう。
この前、夫はあんなふうに言ったけど、100%本心ではないのはわかる。

夫は、なんて答えるのだろう。
「今は出来ないけど、いつかはしよう」
「セックスは出来ないけど、その分抱きしめるから」

そう言ってもらえないのは、わかりきっているけど、
私が一番良くわかっているんだけど、
そう言ってもらえたら、どんなに嬉しいだろう。

くどいかもしれないけど、私は夫が好きだ。
今でも、仕事に出かける前にハグしてもらうと、無性に幸せになる。
私のささいな話に笑ってくれる横顔を見ていると、幸せに満たされる。
人間として、尊敬もしている。
学ぶべきところもたくさんある。

でも、セックスはしてくれない。
今までも、そしてこれからも。

夫が休みの土曜の夜、
私はもう一度聞いた。
最後に。

「私、他の人としてもいいかな?」

この前みたいな間はなかった。

「だから、いいって言ってんだろ」

口調は少し荒かった。

そうか…。
いいんだ…。

不思議だけど、解放された気がした。
この前みたいな、へこみはなかった。

そして、胸の奥からやる気が湧いてきた。

時間は限られている。
グズグズしてると、死んでしまう。

「よし、探そう!」

カテゴリー: diary | コメントする

026-賭け。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

それでも、そんな思いを口に出すのは、思っていたより勇気がいった。

「セックス」という夫婦間の大事な問題なのに、
正面きって話すのは、どうしてこんなにも難しいだろ?
思えば、付き合いの長いホントに心を許せる友人にも、
ずっとセックスレスのことは言えなかった。
夫とも、そのことで何度も喧嘩はしたけれど、
じゃあ私達は今後どうしたらいいか、という話し合いにまではいたらなかった。

これは、私の最後の賭け。

「ねぇ、私はもうセックスしなくてもいいから、
せめて時々裸でスキンシップ出来ないかな?」

3月になろうかという頃だった。
私は努めて軽く、夫に提案してみた。
けど夫の口から出てきたのは、やはり彼らしい答えだった。

「なんでそんなことする必要があるんだ?」

やっぱりね。
でも、一応食い下がる。
「私はもうセックスはあきらめる」
「でも、せめてもっと触れ合いたい」
「たまにホテル行って、一緒にお風呂入ったり、腕枕してもらったり」
「それだけでもいいから」

夫は、何言ってんだ、という表情で私を見る。

「わざわざ金払っていくのか?」

不思議と腹はたたなかった。
ただ、身体の力が一気に抜けた。

わかっている。
この人は、本当に私を大切にしてくれてる。
出会った日から、変わらず私を慈しんでくれる。

でも、この問題だけは多分、どこまでいってもわかりあえない。

いつもは、ここで話し合いは終了。
私は夫を一瞥して、そのまま黙る。
けど、一言付け加えてみた。
もちろん、ケンジさんのことを思い出しながら。

「じゃあさ、私、他の人としてもいいかな?」

さすがに少し間があった。
でも、夫はこう言った。
私から目をそらしながらだけど。

「…別に」
「スポーツクラブ行くみたいなもんだろ」

「そっか…」
「私はアナタが他の人としたら、嫌だけどね」

今までは、ここまでダイレクトに聞けたことはなかった。
喧嘩の最中に腹をたてて口走ることは、何回かあったけど、
こうやってちゃんと聞いてみたのは初めてだった。

多分、私も怖かった。
夫の口から、そうはっきりと言われることが。

でも、私の身体がヘンテコになったのには、セックスレスは無関係じゃあない。

今、ここで駒を進めないと、またいつかダメになる。

けど、夫は、私の申し出を拒んだ。

その夜は、遅くまで携帯のメモ帳に思いのたけを打ち込んだ。
言われた直後は意外に平気でいられたけど、
あれこれ考え始めると感情が溢れ出して止まらなかった。

世界中で一番好きな男に、他の男としてもいいと言われたら?
私はいったいどうしたらいいのかな?
スポーツクラブで汗流すのと、同じなわけないじゃん。
アナタも、セックスがどんなものだか知らないはずないでしょ。
自分の妻が、知らない男になにされても平気なのかな?
そんなに、セックスしたくないんだね。

気がつくと、携帯を持つ左手が痺れていた。

また、身体のほうがうまくたちゆかなくなってきた。
薬を飲んでいないと、頭がぼーっとしたり、立ちくらみがする。

いっとき平気だった母親の存在も、日によって猛烈にダメになる。
彼女の一挙手一投足に、全部の神経が反応する。
頭がモヤモヤする。
叫びたくなる。

ダメだ。
このままじゃダメだ。

心療内科へは月2回のペースで通っていた。
過呼吸こそ出なくなったけれども、自立神経はまだ正常じゃあない。
相変わらずセックスレスなのも打ち明けた。

「アメリカだったら、立派な離婚理由ですよね…」
医者もそんな話をして、苦笑いするしかない雰囲気。

「なにか、スポーツとかして汗流すとか…」
いよいよ言うことがなくなってきたみたいなコトを言う。

心の中で私も笑ってしまう。

〈まさか、誰かとセックスしてみたら、とは言えないよなぁ〉

でも、私自身が一番良くわかっていた。

誰かとセックスしないと、私はダメになる。

カテゴリー: diary | コメントする

025-ケンジ。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

ケンジさんとの距離は、急速に近くなっていった。

データも増えた。
既婚で、お子さんが一人。
食品関係の仕事をしているらしい。
ただ、めちゃくちゃ忙しいようだ。
土日に出勤しているのも、決して珍しくはない。
働き盛りを絵に描いたような40代…。

写真を送ってもらった。
格好いいとは言えないけど、笑った目が優しそうだった。

私の写真も見たいと言われ、
四苦八苦して何枚も自分撮りをしてみた。
ドキドキしながら写真を送ったが、予想外に気にいってもらえたらしい。

ある時、ケンジさんがこんなことを言ってきた。
《ヘンなこと聞くけど、ミオコさんとこって、セックスとかありますか?》
突然の質問に驚いたけど、正直に答えた。
《ないですよ。それもビックリするくらい長く》
ケンジさんも打ち明けてくれる。
《ウチもずっとないです。そういうもんなのかなぁ》

それから私達は、セックスレスのことも話すようになった。
私も彼も似たような境遇。
パートナーとは、仲が悪いわけじゃないけどセックスがない。
そして、いつか会いたいね、そんな話になるのに時間はかからなかった。

《ミオコさんの住んでる街に遊びに行けたらいいなぁ》
《たいしたとこじゃあないけど、案内しますよ》
《そしたら、一緒にホテルに泊まってくれますか?》
《え~?泊まり?》

こんなやり取りが、楽しくて仕方なかった。

お互い、それがむずかしいことなのは百も承知だけど。
それでも、他愛がないこんな会話は、私をときめかせるには十分だった。

やっぱり私は、セックスがしたい。
〈セックスって素敵なことなんだ〉
心からその幸せを知ってから死にたい。
そう、しばらく眠っていた気持ちがまた目覚めてくる。

去年のホスト君との一夜が、人生最後のセックスだなんて。
そんなの悲しすぎる。
本当に心から好きな人と抱き合いたい。

夫とは、多分もう無理だろう。夏の騒ぎのあとは、少しだけ淡い期待もあった。
もしかしたら、また二人であのホテルに行けるかもしれない。
そしたら、今度こそうまくいくかもしれない。

けど、夫は何も言い出さない。
生活がすれ違ってるとか、母親が同居しているとか。
正直そんなのは、いくらでもクリア出来る理由。

夫は、あの夜一緒にホテルに行ったことで、
私の望みを彼なりに果たしたつもりなんだろうな。

ケンジさんとしてみたい。
お互いに、どんどんストレートになってゆく。
私を求めてくれるケンジさんの気持ちが、私の欲求を増大させる。

けど、実際には会うことはむずかしい。
正直、何度か日程を合わせようと試みたこともあった。
でも、お互いが仕事をしているうえに物理的な距離は、大きな壁だった。

そんなふうに悶々としている中、高校時代の友人達と久しぶりの女子会があった。

予約しておいた韓国風のお鍋が美味しい店にゆく。
メンツは4人、ともに既婚子有り。
それぞれに子供も成長し、2,3年前くらいからは、
また集まれるようになった大事な女友達。

程よく酔いも回った二軒目で、去年の夏からのことを話した。
今まで、私達夫婦が長くセックスレスなことは、話せないでいた。

でも、あまりにもいろんなことが起こりすぎ。
今は逆に、笑いを交えて話したい気持ちになっていた。
いい加減酔っ払っていたから、口も軽くなっていたのかもしれない。

今でも覚えてるけど、一人が急にマジになって、強い口調でこう言った。
「ダメだよ、ミオコ。
夫婦なんだから、せめて裸で抱き合うだけどでもしないと」
姉のように、いつも私を案じてくれる大好きな友人だった。

何日経っても、この言葉だけが頭にこびりついていた。
何回も何回も反芻した。

それは私自身が一番良くわかっていること。

私はセックスしたいんじゃなくて、夫と触れ合いたいんだ。
同じベッドで、裸で。
大好きな夫にぺったりとくっついて、甘えたいんだ。
そして、夫の体温を、心音を感じながら眠りたいんだ。

このままでは絶対ダメだ。
私はケンジさんに限らず、誰かを求めて暴走するだろう。
もう一度話をしてみよう、きちんと。
セックスっていう行為が嫌でも、この願いは聞いてもらえるかもしれない。

 

 

カテゴリー: diary | コメントする

024-SNS。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

「ミオコさん、私の日記読んでみてくださいよ」

年末、半年ぶりに恒例のお泊り飲み会。
ライターを仕事にする、後輩の一人にこう言われた。
ネットでブログを書いている、みたいな話だったと思う。
彼女の書くものならきっと面白いだろうな、単純にそう思った。

今でもその時のことを、時々思い出す。
「んじゃ、後でメールで教えてね」

思えばこの夏の一連の騒ぎの発端も、
この会でとんでもないことを言われたからだったなぁ。
心の中で苦笑する。

でもまた、この彼女のなんでもない一言が、
その先の私をまるごと変えるだなんて、この時はもちろん思いもしなかった。

相変わらず気がおけない、アラフィフの楽しい女子会だった。
既婚子有り、子無し、バツイチ、独身。
5~6人の集まりなのに、この世代のパターンが一通り揃ってる。

後輩って不思議だ。
私には、幾つになってもハタチそこそこみたいに思える。
でも、もちろんそんなことはなくて。
同じようにここまで歳を重ねて。
一人一人を語れば、それぞれに長い長い物語が出来る。

後日、後輩からメールが届いた。
例の日記の件だった。

ネットに疎い私はキーワードとか言われても、最初はちんぷんかんぷんだった。
恥ずかしいけど、あれこれ試行錯誤して初めて、
やっとそれがSNSの中にあることに気づいた。

本音を言えば、ちょっとめんどくさかった。
普通にブログ形式で、独立した形だとばかり思っていたから。
わざわざ登録するのも、ちょっと億劫だったし。
どうしようかなぁ、って気持ち。

SNSがどんなものなのかくらいは知ってたし、
回りでも、何人かやってるコはいたし、
楽しいからやれば?と言われたこともあった。
けど、私はなんとなく興味を持てなかった。

なんでかな?
今の自分を取り巻く人間関係で、十分満足もしてたし。
この歳から新たな関わり持つのも、なんか面倒だったし。
危険なイメージも持っていたかもしれない。

でも、せっかく教えてもらったのに、
彼女の書いたものを読まないのは失礼だよね。
とりあえず、なんとか登録してみた。
やっと後輩のトコロにたどり着いたときは、義理を果たした気がした。

けど、あれこれやってみると、思っていたより面白そう。
出身校のところを覗いて、仲の良い同級生を見つけたり。
適当なキーワードを入れて、あちこちプロフィールを読んだり。

《ちょっと食わず嫌いだったかもね》
そう感じた。

プロフィールを覗いた人からメッセージが届いて、
何人かとやり取りしたりもしてみた。
たいていは、数回の行き来で終わってしまったけど。
でも、顔も知らない人とこうして話すのなんて、
私にとってはめちゃくちゃ新鮮だった。

そんな中、届いた一通のメッセージ。
私が行ったことのない、遠い地方の男の人だった。
名前はケンジさん、結構年下。
私が大好きだったドラマが、同じように好きだと言う。
飾り気のない文章にも、好感が持てた。
共通の話題でかなり盛り上がって、メッセージの行き来が始まった。

前にも書いたけど、携帯メールが普及した頃、
私達の世代はすでにいい歳になっていて。つまり、恋愛を一通り終えてゴールした段階だったわけだよね。
そして家庭を持って、仕事に燃えたり、子育てに励んだり。

だから、メールのやり取りでときめく経験なんてなかったの。

なんてったって、昭和30年代の生まれだしね。
私が夫と遠距離恋愛してたときも、たまの電話か手紙が、
二人をつないでくれる貴重なツールだった時代。

だからこそ、
《見知らぬ相手とやり取りするのって、楽しい!》

いつもなら、一人で眠りに就く前に、ケンジさんからメールが来る。
〈おやすみなさい。また明日!〉
通勤途中に私もメールをする。
〈今日もお互い頑張りましょうね〉
夕方、仕事が終わりそうな頃にメールが届く。
〈今日も一日、お疲れ様でした!〉

生活時間が完全にズレている夫とは、こんなことは出来ない。
だから、誰かにこんなふうに言ってもらうだけで、私は単純に嬉しかった。

ケンジさんも、同じ気持ちだった。
《まるで学生時代みたいに、ドキドキしますね》

〈メル友って、楽しい!〉
私はケンジさんとのやり取りに、夢中になっていった。

 

 

 

カテゴリー: diary | コメントする

023-経過。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

母親がいなくなったあとも、9月は何度か過呼吸になった。
いったい、何がきっかけになるのかは良くわからない。

出勤途中で苦しくなり、ドリンクの自販機で順番待ちしていたら、
私の息の荒さにビックリした人が、先を譲ってくれたり。
タバコを買いに入った店では、ラムネや酢こんぶをもらったり。
多分、熱中症だと思われていたのだろう。

やっと職場にたどりついても、使い物にならないこともあった。
でも、とりあえず紙袋で二酸化炭素を戻せば、大分落ち着くので、
最初のときのように、取り乱しはしなかった。

そんな中、いきなり夫が山に登ろうと言う。

よりによって、このクソ暑い夏に登山?
最初は冗談でしょ?って思ってた。

けど、山が大好きで時折近場の山に登っている夫は珍しくひかない。
結局、頂上で飲むビールはうまいぞ、の言葉に誘われ行ってみることにした。

晩夏の山は、木々が生い茂っていて、思っていたより涼しかった。
ど素人の私でも、なんとか登れそうな山を選んでくれたのだろう。

夫はいつも優しい人だけど、ことさら優しかった。

私を気遣いながら、歩調を合わせ一歩ずつ登っていってくれる。
私の歩みが遅くなると、一休みしようと立ち止まってくれる。
水筒に用意してきた冷たいレモン水を飲ませてくれる。

「ゆっくり、ゆっくりでいいから」
何度もそう言う。

つないだ手から、夫の気持ちが伝わってくる。

私は、この夏、ずいぶんヘンテコになっちゃったけど。
性欲の固まりになって、毎晩オナニーして、出張ホスト君に会って。
突然立ってられなくなったあと、爆発してケモノみたいに暴れて、呼吸困難になって。

でも今は、
住み慣れた町を、夫と並んで見下ろしてるこの瞬間は、
果てしもなく穏やかで幸福だった。

翌週、かねてから考えてた心療内科に行ってみることにした。
正直、抵抗はあった。
でも、一度きちんと専門家に話して、心身を良い状態にしないと。

次の休みに、ネットで探した病院を訪ねてみた。
まだ新しいらしく、綺麗で清潔なトコロ。
プライバシー保護のため、名前ではなく、渡された番号札で呼ばれる。

30代後半くらいの若い男の先生だった。
母親のこと、夫とのことを洗いざらい話す。
先生は静かにうなづきながらPCを打ち込んでいく。
今までに起こった症状を話して、薬を処方してもらって。
精神安定剤と、緩和するための胃腸薬と、あともうひとつ。
しめて20分くらいだったろうか。

まぁ、想像していたのとはなんとなく違った。
もっと時間をかけて、カウンセリングしてもらえるかと思っていたし。
でも、待合室は結構混んでいたし、時間も押せ押せなんだろうな。

事情は違っても、こういうところに来る人達が少なからずいるんだな。
そう思うと、気持ちが楽になった。

具体的にああしろ、こうしろ、でなくても、
まったく見知らぬ相手に感情を吐き出すことは、多少心の荷を軽くした。

少しずつでいいから、もとの自分に戻りたかった。

母親のいない間に、家の中もちょっとだけ模様替えした。
今までデッドスペースだった板の間に、私だけのコーナーを作ってみた。
間仕切りを兼ねた本棚を買い襖をたてると、L字にささやかな空間が出来た。
中東の丸い白熱灯をネットで買って、テーブルの上に置いた。
ポッと燈った明かりは優しくて、見ているだけで癒された。

考えてみると、今まで長い間私にはこんな場所すらなかったんだ。
本棚に好きな作家の本や、お気に入りの小物を並べたときは、心底嬉しかった。
携帯のカメラで撮って、しばらく待受にしていたくらい。

他にもいろいろやってみた。
瞑想する、ヒーリングミュージックのCDを聞く。
私のように、心が弱くなった人達の書いた本もあれこれ読んでみた。
とにかく何でもいいから、すがってみたい時期だった。

気がつけば、性欲はキレイにどこかに行ってしまっていた。
あんなに荒れ狂っていたのは、いったいなんだったんだろう?
休火山が大噴火するだけして、スッキリしたんだろうか?

50年近くも付き合っている自分なのに、なんだか良くわからない。
ただわかるのは、限界だったんだろうと言うこと。
必要だったんだろうと言うこと。

静かに秋から冬になり、一見私の周辺は穏やかだった。
年末には母親も帰ってきたが、以前よりはストレスを感じなくなっていた。

けれど。
今だから言えるけど。
この2010年のいろんな出来事は、次のステップへの序章だった。

2011年、私は想像もつかなかった一年を歩むことになる。

 

 

 

 

カテゴリー: diary | コメントする

022-変化。

このブログの今日のランキング(ブログ村)

このブログの今日のランキング(ブログランキング)

 

翌日は、仕事前に行きつけの病院に寄った。
まだ身体は本調子ではなく、点滴をしてもらう。

「更年期には自律神経も乱れたりすることありますよ」
医者が言う。

「でも自立神経が乱れるのは、自分の身体を守るためなんです」
「頑張り過ぎないで、ってあなたの身体がおかしくなるのを阻止してくれるんですよ」

そうなんだ、そういうことなんだ。
お医者さんの言葉に気が楽になる。

長年のセックスレスに自分を押さえて我慢し続けたこと、
母親に対するストレスが思う以上に蓄積してたこと、
それに更年期が重なって、一気に身体に出たんだなぁ。
でも、これは私の身体が出してくれる危険信号なんだ。

三日ぶりにきちんと仕事も出来て、ひと安心した。

その夜シャワーを浴びて居間に行くと、仕事に出かける夫に出くわす。
母親はいなくて、娘は部屋にこもっていた。

太い両腕を回して、抱きしめてくれる。
以前にはなかった習慣だけど、最近は出かける前に必ずこうしてくれる。

「きれいだった」
突然、夫が言う。

「胸も小ぶりだけどきれいだった」
「お尻も垂れてないし」
「肌も本当に変わってないんだね」
照れ臭そうに、でもはっきりと私に語りかけてくれる。

嬉しかった。
口下手な夫から、こんな言葉が聞けるなんて思わなかった。

いつもより強く抱きしめてくれる。
夫のものが固くなって、私に当たるのがわかる。
夫は今、私に欲情してくれてるんだ。
今、私としたいと思ってくれてるんだ。

涙が出るくらい嬉しかった。

こんなことを口に出して言ってくれるのも、
私を抱きしめてこんなふうになってくれるのも、
いったい何年ぶりだろう。

このままずっと抱き合っていたかった。
今なら、この前のやり直しが出来るかもしれない。
でも、残念ながら夫は仕事の時間。

夫を見送ったあとも、幸せな余韻が残った。
私の身体を褒めてくれるなんて、思ってもみなかった。

もしかしら、私達これからまたセックス出来るかもしれない。
そんな予感が、ただただ嬉しかった。

ときに母親は、一連の騒ぎで想像以上のダメージを受けたようだ。
まぁ、長い間一緒に暮らしていた聞き分けの良い娘が、
あんなふうに突然爆発しちゃったらね。

私達がセックスレスなことも知っている彼女は、
原因は自分ではなく、あくまで夫にあると思いたがっているようだった。
私にもそんなそぶりを見せる。

けどこの先、どう接して良いのか、わからなくなったのだろう。
いつの間にか妹のところへ行く手配をしていて、
9月に入ると早々に家を出ていった。
3ヶ月ほど帰ってこないらしい。

久しぶりに親子3人の生活が出来るのが、ただただ嬉しかった。
夫にも気兼ねなく甘えたいし、娘とも密な時間を過ごしたい。
この間に気持ちをリセットして、自立神経も戻したい。

そんな気持ちで9月が始まった。

カテゴリー: diary | コメントする