028-回想

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それからの私は、毎日のようにSNSのあちらこちらを覗いて廻った。
その中の何人かからメッセージが来て、
良さそうな人とはしばらくやり取りしてみた。

やったことがある人はわかると思うけど、本当に楽しい。
どんどん相手の情報が増えてきて、人柄やら、生活背景やらが見えてきて。
何年かぶりの、恋みたいな気持ちにときめいて。

そんなある日、確か夫が休みでなんとなく二人でいたとき。
いつになく真面目に、私に言った。

「…俺は、お前と一緒になって良かったと思ってる」

「だからどちらかが死ぬまで、ずっと一緒だから」

思わず、夫の顔を見る。

無口なこの人が、こんなことを口に出すなんて。
いったいいつ以来なのか、とっさに思い出せない。
そう、結婚式の最後のスピーチだったろうか。

「こんなことを言うのは、もうないでしょうが」

「多分、一生口にしないと思いますが」

確か前置きがやたらに長くて、何を言い出すのかと当惑した。
思い出して、苦笑いしてしまう。

「私はいいパートナーに巡り会えて、しあわせです!」
会場がワッと盛り上がって、拍手に包まれた。

7年近くに及ぶ、長い付き合いだったけど、
こんなことを言ってもらうのは初めてだった。
しかも、集まってくれたみんなの前で。
ただただ嬉しくて、誇らしかった。

あの時以来、初めて聞いた夫の気持ちだった。

心に染みた。

あれから19年がたったけど。
私はこの人と一緒になって、本当に良かったと思っている。
今でも心の底から、夫のことが好きだ。

けど、十分すぎるくらいその気持ちがあっても、
夫がしたくないからセックスは我慢する、はおかしい。
身体に変調が出るほど、私はこの不自然な状態に耐えてきた。

だから今、二人で話し合って、こういう選択をする。

世間一般からしたら、おかしな夫婦かもしれない。

他の男とのセックスを許す夫と。
セックスしてくれる相手を探す妻と。

けど、18年間きちんと向き合うことなくきてしまったこの課題は、
今こそ、解決しなければならない。

〈このままでは私はダメになる〉

そう訴えた私に、夫は返答してくれた。

だから、もう足は止めない。

でも、
夫が言ってくれた言葉は忘れない。
胸に刻み込む。

私はネットで相手を探し続けた。
そうはいっても、見知らぬ相手に会うまでには慎重をきした。

出張ホスト君は、一応そういう組織に所属しているプロだけど、
ネット上には、当然いろいろな人がいるし。
やり取りして相手を見極めるのは、自分にかかってくる。

だから、最初はSNS上でしばらくメッセージをやり取りして。
安心できそうな人なら、次にアドレスを教え合う。
で、電話番号や写真を、双方で交換しあう。

だけど、今だから言えるけど、
念をいれたからうまくいくわけじゃない。
メールや電話のやり取りがいい感じでも、それは保証にならない。
さらに言えば、実際に会って飲んで話が弾んでも、安心できない。

まぁ、みんなわかってると思うけど。
50歳を迎えてから、ネットでセックスする相手を探そう!
なんて思い立った私は、すべてが手探りだった。

正直、この頃のことは書かないですむならスルーしたい。

当然だけど「書く」ということは、当時に気持ちを戻して、
そのときのリアルな感情を呼び覚ます行為だから。
想像つくとは思うけど、記憶に削除機能ついてたらソッコーで消してた。
大半がそんなこと。
けど、そんなふうな嫌な目にあったことも、きちんと残しておかないとね。
それをちゃんと書いてこそ、今の自分があるんだからね。

私がこれを書いているのは、今の自分を知ってほしいから。
だから、その過程も隠さないで書く。


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