022-変化。

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翌日は、仕事前に行きつけの病院に寄った。
まだ身体は本調子ではなく、点滴をしてもらう。

「更年期には自律神経も乱れたりすることありますよ」
医者が言う。

「でも自立神経が乱れるのは、自分の身体を守るためなんです」
「頑張り過ぎないで、ってあなたの身体がおかしくなるのを阻止してくれるんですよ」

そうなんだ、そういうことなんだ。
お医者さんの言葉に気が楽になる。

長年のセックスレスに自分を押さえて我慢し続けたこと、
母親に対するストレスが思う以上に蓄積してたこと、
それに更年期が重なって、一気に身体に出たんだなぁ。
でも、これは私の身体が出してくれる危険信号なんだ。

三日ぶりにきちんと仕事も出来て、ひと安心した。

その夜シャワーを浴びて居間に行くと、仕事に出かける夫に出くわす。
母親はいなくて、娘は部屋にこもっていた。

太い両腕を回して、抱きしめてくれる。
以前にはなかった習慣だけど、最近は出かける前に必ずこうしてくれる。

「きれいだった」
突然、夫が言う。

「胸も小ぶりだけどきれいだった」
「お尻も垂れてないし」
「肌も本当に変わってないんだね」
照れ臭そうに、でもはっきりと私に語りかけてくれる。

嬉しかった。
口下手な夫から、こんな言葉が聞けるなんて思わなかった。

いつもより強く抱きしめてくれる。
夫のものが固くなって、私に当たるのがわかる。
夫は今、私に欲情してくれてるんだ。
今、私としたいと思ってくれてるんだ。

涙が出るくらい嬉しかった。

こんなことを口に出して言ってくれるのも、
私を抱きしめてこんなふうになってくれるのも、
いったい何年ぶりだろう。

このままずっと抱き合っていたかった。
今なら、この前のやり直しが出来るかもしれない。
でも、残念ながら夫は仕事の時間。

夫を見送ったあとも、幸せな余韻が残った。
私の身体を褒めてくれるなんて、思ってもみなかった。

もしかしら、私達これからまたセックス出来るかもしれない。
そんな予感が、ただただ嬉しかった。

ときに母親は、一連の騒ぎで想像以上のダメージを受けたようだ。
まぁ、長い間一緒に暮らしていた聞き分けの良い娘が、
あんなふうに突然爆発しちゃったらね。

私達がセックスレスなことも知っている彼女は、
原因は自分ではなく、あくまで夫にあると思いたがっているようだった。
私にもそんなそぶりを見せる。

けどこの先、どう接して良いのか、わからなくなったのだろう。
いつの間にか妹のところへ行く手配をしていて、
9月に入ると早々に家を出ていった。
3ヶ月ほど帰ってこないらしい。

久しぶりに親子3人の生活が出来るのが、ただただ嬉しかった。
夫にも気兼ねなく甘えたいし、娘とも密な時間を過ごしたい。
この間に気持ちをリセットして、自立神経も戻したい。

そんな気持ちで9月が始まった。


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