024-SNS。

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「ミオコさん、私の日記読んでみてくださいよ」

年末、半年ぶりに恒例のお泊り飲み会。
ライターを仕事にする、後輩の一人にこう言われた。
ネットでブログを書いている、みたいな話だったと思う。
彼女の書くものならきっと面白いだろうな、単純にそう思った。

今でもその時のことを、時々思い出す。
「んじゃ、後でメールで教えてね」

思えばこの夏の一連の騒ぎの発端も、
この会でとんでもないことを言われたからだったなぁ。
心の中で苦笑する。

でもまた、この彼女のなんでもない一言が、
その先の私をまるごと変えるだなんて、この時はもちろん思いもしなかった。

相変わらず気がおけない、アラフィフの楽しい女子会だった。
既婚子有り、子無し、バツイチ、独身。
5~6人の集まりなのに、この世代のパターンが一通り揃ってる。

後輩って不思議だ。
私には、幾つになってもハタチそこそこみたいに思える。
でも、もちろんそんなことはなくて。
同じようにここまで歳を重ねて。
一人一人を語れば、それぞれに長い長い物語が出来る。

後日、後輩からメールが届いた。
例の日記の件だった。

ネットに疎い私はキーワードとか言われても、最初はちんぷんかんぷんだった。
恥ずかしいけど、あれこれ試行錯誤して初めて、
やっとそれがSNSの中にあることに気づいた。

本音を言えば、ちょっとめんどくさかった。
普通にブログ形式で、独立した形だとばかり思っていたから。
わざわざ登録するのも、ちょっと億劫だったし。
どうしようかなぁ、って気持ち。

SNSがどんなものなのかくらいは知ってたし、
回りでも、何人かやってるコはいたし、
楽しいからやれば?と言われたこともあった。
けど、私はなんとなく興味を持てなかった。

なんでかな?
今の自分を取り巻く人間関係で、十分満足もしてたし。
この歳から新たな関わり持つのも、なんか面倒だったし。
危険なイメージも持っていたかもしれない。

でも、せっかく教えてもらったのに、
彼女の書いたものを読まないのは失礼だよね。
とりあえず、なんとか登録してみた。
やっと後輩のトコロにたどり着いたときは、義理を果たした気がした。

けど、あれこれやってみると、思っていたより面白そう。
出身校のところを覗いて、仲の良い同級生を見つけたり。
適当なキーワードを入れて、あちこちプロフィールを読んだり。

《ちょっと食わず嫌いだったかもね》
そう感じた。

プロフィールを覗いた人からメッセージが届いて、
何人かとやり取りしたりもしてみた。
たいていは、数回の行き来で終わってしまったけど。
でも、顔も知らない人とこうして話すのなんて、
私にとってはめちゃくちゃ新鮮だった。

そんな中、届いた一通のメッセージ。
私が行ったことのない、遠い地方の男の人だった。
名前はケンジさん、結構年下。
私が大好きだったドラマが、同じように好きだと言う。
飾り気のない文章にも、好感が持てた。
共通の話題でかなり盛り上がって、メッセージの行き来が始まった。

前にも書いたけど、携帯メールが普及した頃、
私達の世代はすでにいい歳になっていて。つまり、恋愛を一通り終えてゴールした段階だったわけだよね。
そして家庭を持って、仕事に燃えたり、子育てに励んだり。

だから、メールのやり取りでときめく経験なんてなかったの。

なんてったって、昭和30年代の生まれだしね。
私が夫と遠距離恋愛してたときも、たまの電話か手紙が、
二人をつないでくれる貴重なツールだった時代。

だからこそ、
《見知らぬ相手とやり取りするのって、楽しい!》

いつもなら、一人で眠りに就く前に、ケンジさんからメールが来る。
〈おやすみなさい。また明日!〉
通勤途中に私もメールをする。
〈今日もお互い頑張りましょうね〉
夕方、仕事が終わりそうな頃にメールが届く。
〈今日も一日、お疲れ様でした!〉

生活時間が完全にズレている夫とは、こんなことは出来ない。
だから、誰かにこんなふうに言ってもらうだけで、私は単純に嬉しかった。

ケンジさんも、同じ気持ちだった。
《まるで学生時代みたいに、ドキドキしますね》

〈メル友って、楽しい!〉
私はケンジさんとのやり取りに、夢中になっていった。

 

 

 


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