032-涙。

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今までも1日くらい返信がないことはあったけど、
3,4日が過ぎるとさすがに不安になってきた。
最後にやりとりしたメールを何回も確認する。
《今日は用事があって、アツシさんの住んでるあたりまで行ってきました》
《いつも、この辺りにアツシさんがいると思うだけで、嬉しかった》
アツシさんの返事も、
《なんか、自分の生活圏内にミオコさんがいたんだなと思うだけで嬉しい》
《帰り道、このへんを歩いたのかなぁ、って思いながら走りましたよ》
今まで通りの、むしろ関係が安定してきた二人のやり取りだったのに。
最後に会ったときも、いつもの優しいアツシさんだったのに。

この頃やたら忙しそうだったから、体調崩したのかな。
この前も、具合悪くて早退したって言ってたし。
でも、がむしゃらに無理するタイプだし。
職場でのポジションも重要になってきたようなこと言ってた。
けれど、一抹の不安がぬぐえない。
もしかしたら、私の気持ちが重荷になったのかな?
気をつけてはいたけど、一途になりすぎちゃった?
でも、嫌になったときはキチンと伝えてね、
私はいつもそうお願いしてあった。
何よりアツシさんの性格を思えば、こんな終わり方はする人じゃない。
だけど思った。
万が一にも、アツシさんになにかあっても、私は知ることも出来ない。
ネットで知り合っただけの、時々会ってセックスするだけの間柄。
頭ではわかっていても、実際に連絡が途絶えると、こんなにも苦しいんだ。
《なにかあったの?心配してます》
二度ほど送ったメールにも返事は来ない。
気づいたら、食事が喉を通らなくなってしまった。
夜もそのことばかり考えて、眠りにつくことが出来ない。
少し前に、仕事を辞めて時間を持て余していたのも良くなかった。
考えてみると、私は彼の携帯番号も知らない。
仕事先の電話は調べることは出来たけど、さすがにそれは勇気が要った。
電話をして普通に出勤していたら、それはイコール終わりってことだから。
考えに考えて、本当に最後のつもりでメールをした。
《どういう返事でも大丈夫だから、最後に一言メール下さい》
意を決して送ったあと、気持ちは少し楽になっていた。
このままじゃいけないよね。
久しぶりに、キチンとお味噌汁を作ってお腹に入れた。
服を選んで、お化粧して、買物に出かけた。

〈もしかしたら、生まれて初めて男に捨てられたんだぁ〉
改めて考えてみる。
若い頃はと言えば、片思いで玉砕のパターンばっかりだったし。
なんとなく成り行きで付き合った相手とは、終わりがきても何も感じなかったし。
で、自分が心底好きになった相手とは、幸せなことに一緒になれたし。
だから、私は惚れた男に捨てられたことなんかなかった。
それがまさか、50過ぎてからこんな思いするなんて。
でも、考えているうちになんだか笑えるようになってきた。
この歳で、こんなにも惚れ込んで、こんなもに辛くって。
だけど、こんなふうに想える相手に出会えただけでも、幸せかもしれない。
気持ちが、ずいぶん前向きになってきた。
アツシさんと出会えてから、私の毎日は輝いていた。
いつだったか、待ち合わせの場所に急ぐ駅前で、
映画のエキストラをやりませんか?と声をかけられた。
時間がないからと断ったけれど、とても素敵だったので、と若い男の子に言われた。
もちろんお世辞だろうし、悪質なキャッチだったのかもしれない。
でも、アツシさんに会える喜びでいっぱいだったあのときの私は、素敵だった。
間違いなく、素敵だった。
そんなことを思い出しながら、冬のジャケットやニットを買って。
なんだか、久しぶりにいつもの私に戻った気がした。
〈アツシさんと知り合えただけでも、良かっんだよね〉
そんなふうに思えるようになってきた。
〈いい歳していつまでもみっともないし、踏ん切りつけよう〉
大分、気持ちの整理がついてきた。

そんなふうに考えた日に、アツシさんからメールが来た。
久しく聞かなかった、アツシさんのメールの着信メロディが鳴ったとき、
心臓が止まるくらいビックリした。
《すみません、過労でぶっ倒れて入院してます》
《ずっと連絡できなくてごめんなさい》
《ミオコさんを心配させちゃったよね》
開いた途端、涙がこぼれて携帯の画面を濡らした。
後から後から涙が溢れて止まらない。
良かった。
本当に良かった。
アツシさんは生きてる。
入院してただけなんだ。
嫌われたんじゃなかったんだ。
ちゃんと私にメールくれた。
良かった。
本当に良かった。
いくらでも涙が出てきた。
こんな涙、いったい何年ぶりに流しただろう。
私、まだこんな気持ちで泣けるんだ。


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