015-不毛。

いつになく毎日、気持ちがアップダウンしてた。
よせばいいのにそんなときに限って、私は夫を攻撃したくなる。

「ねぇ、私が他の人としたらどう思う?」

蒸し暑くて、昼間の疲れも良く抜けていなかった晩。
アルコールの回りも、いつになく早かった。
夫は休みで、録りためたなにかの番組を楽しげに観ていた。

そして、いつものように何も言わず、少しさびしげな顔をする。

今まで何十回も繰り返されてる、不毛なやり取り。
それでも、たまに口に出さずにはいられなくなる。
もともと無口な夫は、私と争いにならない一番の方法を良く知っている。

でも、知っていても聞かずにはいられないときがある。
たとえ、そのたび切なくなるのがわかっていても。

《嫌だ》
そう答えられても、夫の理不尽さに無性に腹が立つに決まってる。
じゃあ、一生このまんまでいろ、ってことだよね、と絶望する。
一人でオナニーして我慢しろってわけね、と暴れたくなる。

《いいよ》
と言われたら、どうしていいか混乱する。
世界中で一番好きな男にそんなこと言われたら、どうしたらいい?

でも、その夜はこんなふうに言って欲しかった。

『身勝手だけど誰ともしてほしくない』
『でもセックス出来ない分、ちゃんとキスして抱きしめるから』
それが、多分その日の私が求めてた正解。

ホスト君としてしまったことで、気持ちの揺れ幅はいつもよりさらに大きかった。

『私、他の男とセックスしたよ』
『あなたが抱いてくれないから、お金出して抱いてもらった』
『けど、昔みたいに満ち足りた気持ちにはならなかったよ』
もちろん、口には出せない。

この前の夏祭りの一件のあと、夫は謝ってくれた。
ただし、自分からじゃないけどね。
以前よりは、スキンシップをこころがけてくれるようになった。
頭をなでる、手を握る、肩を抱く、時折抱きしめる。

けど、だけど。
私が求めているのは、やっぱりそれじゃあないんだよ。

裸になって、抱きあいながら、セックスにつながるキスをして。
愛おしく相手の身体のあちこちに触って、、最後にひとつになりたい。
私の望みはそれだけなの。
他にはなんにもいらないの。

好きな人とセックスしたいと思うのは、いけないことなの?
何千回、何万回も心の中で叫んだ言葉。

でも、私がため息ついてその場を離れれば、話し合いはそれで終了。
夫の目は、またテレビ画面に戻る。

まずいな、私。
なんかあんまりいい精神状態じゃないな。
自分が一番よくわかってる

夜更け、夫が出かけたあとに、携帯のメモ帳に苛立つ思いを打ち込み続ける。
気がつくと左手が痺れてて、二時間が過ぎていたこともあった。

そんななか、生理がきた。
あの、ドロッとしたものを感じた途端、
お腹の底から猛烈な怒りが込み上げてきた。

初めての感情だった。
こんなこと、もう40年近く付き合っているのに。
子宮からの経血と、頭の芯からの怒りが一緒になって出てきた。

なんでこんなもんがくるの?
私は女でもなんでもないのに。
お願いだから早くあがってほしい、一日も早く。
そしたら、今よりは少しは楽になれるだろうに。
涙が出た。

やっぱり、ホスト君じゃあ、奥底までは解決されてないんだな。
愛情でも、友情でも、同情でも、私になんらかの情を持った人。
夫が絶望的なら、誰?

やっぱりシュンしかいない。


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