013-ホテル。

〈平日の8時過ぎなのに、満室多いんだぁ〉
ブランクありすぎの私は、キョロキョロして見てまわった。

入ったのは、笑っちゃうくらい高い部屋。
〈18年ぶりにセックスするんだし、パーッといってもいいじゃない〉
そんな気持ちもあった。

マサトさんがバスタブにお湯をはる。
テラスみたいなところに、大きなジャグジーバス。

「ミオコさん、一緒に入ろ」
先に入ったマサトさんが、私を呼ぶ。
意を決して服を脱ぐ。

ほんの数時間前に会ったばかりの、年下のホスト君。
でも、何週間も悩んで考えて、自分で決めたこと。

バスタブの中で向かい合う。

キスされる。
唇はふっくらしていて気持ちいい。

乳首を触られる。
身体がギュッと固まる。

マサトさんの手が、私の身体のあちこちを這う。
長い間、誰にも触られなかった部分にも。
思わず声が漏れる。

お金を払って、今夜だけ私を抱いてくれる人。

私は身体のむきやら形やら、あれこれ変えられて、
長い長い間、、マサトさんに刺され続けた。

〈セックスって、こんな感じだったっけなぁ?〉
〈これが、ずっと欲してたことなのかなぁ?〉

遠い記憶が、少しだけ甦ってくる。

夫とも、出会った頃は夢中になってしてたっけ。
彼のアパートに泊まった晩は、面白がって回数数えたこともあった。
ハタチだった彼は、もちろんそんなに経験もないけど、
ただ一生懸命、私を愛してくれた。

イクとか、イカないとか、そんなことは良くわからなかった。
けど、一番好きな人と裸でぺったりくっついて、
お互いの身体がつながってるだけで、幸せだった。

私の上で彼が果てて、満足そうに体重預けてくれる瞬間が
とてつもなく幸せだったんだ。

〈セックスって、好きな人とするもんなんだな〉

こんな歳になって、お馬鹿さんの私は気づく。
こんな手段を使って初めて。
でも、どれもこれも、してみなかったらわからなかったことだらけだ。

そんな私の気持ちが伝わってしまったのか、マサトさんがすまなそうに言う。
「ゴメン、なんかダメになっちゃった…」
「…ううん、私も久しぶり過ぎて」
「でもミオコさん、イカなかったよね」

プロの意地もあるのか、マサトさんはこだわる。
けど、持ってるすべてのテクニックで、
私を悦ばそうとしてくれた気持ちは、よおく伝わってきたよ。

「だけど、すごく気持ちよかった。ありがとう」
そう言うと、安心したようににっこり笑う。
なんか憎めない人だ。

「でも49歳にみえないね、身体すごくきれい」
えっ?ホントに?
そういえば、セックスの最中、何回か言ってくれてたっけ。
ホントにきれいな身体って。

急に嬉しくなる。
「ありがとう、今まで言われたことなかった」

私は自分の身体にコンプレックス以外、感じたことはなかったから。
ガリガリで、胸もお尻もペッタンコだし。
だから、浮気をする勇気も出なかったのに。
お世辞でもなんでも、嬉しかった。

「ホントはさ、他に好きなコいたんだ」
「でも、遊びまくってて、今の女房を妊娠させちゃって」
「向こうの親に怒鳴りこまれて結婚して」
腕枕しながら、マサトさんがぼそぼそ話しはじめる。

「好きだった彼女は実家に帰っちゃって」
「でもさ、何年か前に彼女の地元に出張したとき、連絡とって」
「そしたら、まだ独身で、一緒になりたかったって泣かれてさ」

そうかぁ、うまくいかないね。

「初めて抱きあって、俺も泣いちゃった」

切ないね。
「マサトさん、いつかその彼女と一緒になれたらいいのにね」
私は本心からそう言った。

それから、私達は時間がくるまで、ずっと話し続けた。
こんなふうに裸のまんま、今日会ったホスト君の思い出話聞く私って…。
心の中で、一人苦笑した。


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