一週間とたたないうちに、またユウヤ君に会った。
私をみつけて、ニヤッと笑う。
まだ二回目なのに、二人の距離は一気に近づいてる。
メールはチャラくて軽いけど、会ってるときの彼は、案外寡黙だ。
何も言わずに、私の様子を見ながらセックスに没頭する。
アツシさんとは、全然違う。
彼は、私の身体を褒めたり、自分の気持ち良さを、口に出して言ってくれてたけど。
ユウヤ君は、黙々と作業に打ち込む感じ。
〈…なんだか職人みたい〉
でも、それがかえって静かな興奮をあおる。
一回あっただけなのに、私の感じる部分を、的確に探りあてる。
〈このヒト、すごく学習能力ある〉
いったいどうして?と思うくらい。
こういうことって、あるんだ。
ほんの軽い気持ちでネットで探した相手が、
今まで感じたことないくらいの快感を与えてくれる。
〈セックスって、こういうものだったんだ〉
中途半端な私に、彼のドライさは救いだった。
なんとなくだけど、すごく割り切ってるみたいな。
「一号さんとは、いつ会うの?」
「…今週末、仕事入らなければ」
「ふうん」
最近は、仕事やら体調崩したやらで、なかなか会えなかった。
〈やっぱり飽きられたのかな〉
〈こんなふうに、フェードアウトしてっちゃうのかな〉
ユウヤ君は申し分ない相手だ。近いし、すぐに会える。
メールの返信にやきもきすることもない。
会うたび、彼の良さがわかってきてる。
正直、気持ちはどんどん傾いてゆく。
でも多分、今はその時期じゃない。
決してアツシさんを忘れたわけじゃない。
ただ、、メールはますます間遠くなってる。
そして、最近の彼には以前の溌剌さが感じられない。
《なんだか、いろんなことが憂鬱に思えて》
《今は、ミオコさんの彼氏でいる気持ちのゆとりが持てなくて》
そんなアツシさんに、何通もメールを書いた。
会えない間、寂しくてたまらないこと。
今のアツシさんを案じていること。
そして、ユウヤ君のこと…。
もちろん送れない。
送信ボックスに、未送信メールがたまってゆく毎日だった。
帰り支度しながら、ユウヤ君が聞いてくる。
「お前んちのメシ、今日なに?」
「う~ん、寒くなってきたし鍋でもしようかな」
「そっ」
おんなじような会話を、アツシさんともしたことを思い出す。
「ミオコさん、今日の晩御飯なに作るの?」
「チャチャっと、豚の生姜焼きとキャベツたっぷり」
「いいねぇ」
思い出して一人で笑う。
アツシさんとも、ユウヤ君とも、食卓をともにすることはありえないのに。
同じ場所に帰ることは、決してないのに。
アツシさんと会う予定だった日。
遅い時間に、唐突にユウヤ君メールがくる。
《今日は一号さんと気持ちよかったのかな?》
《調子悪いみたいで、会わなかったよ》
《あ~、そう》
あれ?
なんだかこの人、ちょっとキャラ違うのかな?
急に可愛く見えてくる。
三度目にユウヤ君と会ったとき。
この日の彼は、意表をついて私を攻めてきた。
スリップを着たまま湯舟に入れられて、彼の上に仰向けにされて。
背中越しに、乳首とクリトリスを執拗にいじられて。
閉じようとする両足は、そのたび浴槽の縁に乗せられてしまう。
小島のように浮かぶ部分からは、恥ずかしいくらいに潮が吹き出て。
快感とのぼせで、上手く立つことも出来なくなった。
ベッドに移ってからも、彼は手を休めない。
じっくりと焦らしながら、私の中に入ってくる。
やみくもに突いてくるようなことは、決してなくて。
私はあたたかな彼を、全身で感じる。
この前、私がその瞬間が好き、と言ったのを、ちゃんと覚えていてくれてる。
嬉しかった。
二人の身体がつながっているだけで、途方もなく満たされる。ただただ幸せだった。
唐突に思った。
この人と私、相性がいいんだ。
思わず、つぶやいた。
「このまんま、死んじゃってもいいな」
ユウヤ君も笑って、初めて口を開く。
「だな」
長い間、切望していたもの。
本当に好きな人との、身も心もひとつになるようなセックス。
このまま死んじゃうのは嫌だと、一年半以上ももがきまくって。
でも、今わかった。
こういうことなんだ。
彼の身体の重みも、肌も、体温も、息遣いも、
すべてが愛おしかった。
この幸せを知らずに、死んじゃわなくてよかった。
私、間に合った。
間に合って良かった。 あたしも間に合ったよ。 人生一度きりなんだもん! あのまんま終わらなくて良かった。求められ求め…身も心もひとつになる幸福感。
ほんと、間に合って良かった。
じゅんさん、間に合って本当に本当に良かった。
詳しい事情はわかりませんが、じゅんさんが幸せに満たされて、ここに書き残して下さったこと、嬉しいです。
ものすごく嬉しいです。
いろんな方からコメントいただくたび、書いてて良かったなぁ、と思いますが、
ことさらに思いました。
じゅんさん、ありがとうございました。
偶然目に留まり、一気に読んでいます。
なんて正直で純粋なんだろう。
そして貴方は天才です!
文章がすばらしい!いつか書籍化なさるとよいですよ!
いろんなブログをよんできたけど
こんなに引きつけられたのは始めてです
あきさん、コメントありがとうございます。
こんなに間があいて、読んでくださるかどうかわかりませんが。
褒めていただいて、本当にうれしいです。
こういうコメントをいただくと、まだやめないで細々と書いて行こう、と思います。
もうすぐ53歳になる、まぁどこにでもいる普通の女として、日々感じたこと、考えていることを、正直に書いてゆきます。
最後になりますが、あきさんにとって、来年が素敵な年になりますように。