053-逢瀬。

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長らく忘れていたけれど、恋が加速していくってこんなんだったんだ。
こんなにも恋こがれて、歯止めが効かなくなるものだったんだ。

仕事が休みで、気分を変えて駅前まで買い物に行った。
夏のセールも終わりかけだけど、服やら靴を見ようかなぁ、なんて思って。
朝から何回かやり取りをしてたけど、ユウヤ君にまたメール。
このところ、毎日欠かさずメールしあってる。
多い日は50通以上、たわいないメールが行き交ってる。
「今、〇〇駅でフラフラ買い物中」
すぐに返事がくる。
「ちょっとだけホテル行く?」
今日は彼も休み。
夜は飲み会って言ってた。
彼の最寄り駅にいるらしい。
嬉しいけど、会えるなんて思ってもなかったから、ちょっとだけ迷う。
食料品の買い物袋を下げて、家に帰るバスの列に並んでるところ。
どうする?
でも、幸い生ものは買ってないし。
6時くらいまでに家に帰れれば大丈夫だし。
会いたい。
痛烈に会いたい気持ちが湧き上がる。
一時間でも、二時間でもいい。
「今から電車乗る」
きびすを返して駅に戻る。

待ち合わせ駅のコンビニ前に、ユウヤ君の姿が見える。
心がはやる。
でも、絶対に駆け寄ったり、声をかけたりはしない。
「ビール買ってこ」
「そだね」
お互いの姿を確認しながら、メールで会話する。

二週間会えなかっただけなのに、毎日メールしあってたのに、
なんでこんなに恋しくてたまらないんだろ?
ホテルは一ヶ月ぶりになる。
「なんかずっと会ってなかったみたいだよな」
「そうだよね、半月なんだけどね」
ユウヤ君も同じ気持ちなのが嬉しい。
予定もしてなかったけど、こんなふうに突然会えるのが、ことさらに嬉しい。

ユウヤ君と入る久しぶりのお風呂。
一ヶ月ぶりに見る彼の身体が懐かしい。
ユウヤ君の身体のすべてが愛おしくてたまらない。
なんでだろう?
どうしてこんなにと思うくらい…。
バスタブに浸かりながら、そしてベッドの上で、
私は大好きな人の身体を、出来る限り一生懸命に愛おしむ。
触れる、撫でる、口づける、舐める。
俺様ユウヤ君は、笑いながら、
「お前さぁ、相変わらず上達しねえなぁ」
とか勝手ばかり言う。
「じゃあ、よそで修業積んでくるよ」
私も笑って返す。
いつものやり取り。
でも、顔をあげるとユウヤ君の表情がわかる。
気持ちよさそうに目をつぶっている顔を見ると、
もっともっと感じてほしくてたまらなくなる。
大好きな男がそんな顔をしてくれてるだけで、私は幸せに満たされる。

やがて我慢出来なくて、思わず口に出してしまう。
「…入れたい」
「いいよ…」
ユウヤ君の声が甘い。
私達は久しぶりにつながる。
身体全部でユウヤ君を感じる。
思わず息がもれる。
「…気持ちいい」
「どこが?」
ユウヤ君が意地悪く私に言わせようとする。
恥ずかしいけど口にする。
身体の芯から熱くなって溶けそうになる。

こんな私は想像すらつかなかった。
そう、ほんの2年前の夏。
誰かとセックスしないと死んでしまうと思い詰めてた自分。
18年間、誰にも触れてもらえなくて、誰にも触れられなくて。
セックスに歪んだ憧れと恐怖しかなかった自分。
たった一度でいいから、誰かとセックスしてから死にたい、
このまま歳をとって死にたくない、
来る日も来る日もそればかり考えてた。
18年もの間、大好きな夫に拒まれて、
加えて更年期と酷暑で、私は心身ともに崖っぷちにいた。
たかがセックス、そう思う人もいるかもしれない。
でも今ならわかる。
私は、誰かに私を求めてほしかったんだ。
心だけじゃなくて、身体ごと。
そして、身体だけじゃなくて心も。
それが私の願いだったんだ。

ユウヤ君は私を求めてくれる。
心も身体も。
だから、私も彼を求めてやまない。
ユウヤ君のすべてを味わう為に、五感をフル稼動させる。
両手は、彼の身体を出来る限り感じたくてはい回る。
肩から、肩甲骨から、背中から、お尻まで。
耳は、彼の小さな息遣いも聞き逃すまいとする。
舌や唇も、彼の皮膚を味わいつくす。

どうしてだろ?
二人の身体がつながっているだけで、どうしてこんなに満たされるんだろう?
どうしてこんなに安心するんだろう?
身体が溶け合うって、こういうことなんだね。
ひとつになるって、こういうことなんだね。
私、わかってよかった。
本当にわかってよかった。

ユウヤ君が私の中で果ててくれる。
至福。

私は時々考える。
もしも、世界が終わる瞬間にはどうしていたい?
少し前なら、夫と娘と静かに過ごしたい、そう考えてた。
でも、今は違う。
こうしてユウヤ君とつながっていたい。
お互いの身体を抱きしめながら、最後の時間を過ごしたい。

ユウヤ君の胸に耳をあてる。
心音が聞こえる。
少し速いけど、規則正しい音。
からませた手足はユウヤ君の体温を感じる。
「…生きてる」
笑われるから、口には出さなかったけど。
でも、今この人は間違いなく生きてて、私も生きてる。
生きてて、愛しあって、こうしていられる。

これ以上の幸せはないな。


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053-逢瀬。 への6件のフィードバック

  1. じゅん のコメント:

    そう。 心と身体が繋がるから満たされるんだとおもう。

    幾度も幾度も身体を重ねるごとに 愛おしさは倍増し可愛くなってくる。

    可愛いからお互い 気持ち良くしてあげたくなってくる。

    足りてる。
    幸せだって思う。

    誰でもいいわけじゃないんだね。

    • ミオコ のコメント:

      じゅんさん、コメントありがとうございます。

      今一番感じるのは、生きてる間に、セックスのシアワセがわかってよかったなぁ、ってことです。
      長い間、私にとって憧れだったから。
      身も心もひとつになるって、こういうことだったんだ、って気持ち。
      きっと、神様が私を見兼ねてユウヤ君と引き合わせてくれたのでしょう。

      じゅんさんもお幸せそうで何よりです。
      限られた時間の中ですが、お互い、大好きな人とたくさん×2愛し合いましょうね。

  2. のコメント:

    自分から好きだと求めて愛し合うのも良いですが、同じ愛し合うのでも相手から必要(愛したい)と思われての繋がりは、本当の意味で気持ちと身体が一つとなり身体的な物理的な快楽だけで無く気持ちの繋がりも感じ気持ちが一つになると「愛し合ってる♪」と実感出来ますよね。

    W不倫ですから現実生活を二人で過ごす事は出来ませんが、旦那さん子供さんと家族として現実生活を大切にさつつ可能な範囲(無理をしたらどちらかの気持ちが離れる)で、女としの時間(幸福)を感じて下さいね♪

    私も現役と言われている内に彼女を探さないと(笑)

    • ミオコ のコメント:

      Kさん、いつもありがとうございます。

      10ヶ月目に入った私達の付き合いは、とても良い感じで進展しています。
      これから、ブログに書くようなたいしたネタはないかもしれませんし、
      正直、この世代の恋愛話に興味を持って下さる方がどのくらいいらっしゃるのかわからないのですが、
      お互いに家庭を持つ二人の行く末を、嘘偽りなく書いていってみたいと思います。

      Kさんにも、素敵な出会いがありますようにお祈りしていますね。
      恋は何よりの認知予防です(笑)

  3. のら のコメント:

    ほっこりとした素敵な話しにまた自分たちを重ねて読ませてもらいました。我々も彼女が仕事始めてからなかなか会え無くて…メールか電話で他愛ない話したりたまには飲みたいななんて会話したりです。
    時が過ぎるのが速いから二人の時間はより大事に過ごしたいですね…夢は二人で旅行したい、こんな話しながらまるで「失楽園」だねなんて笑いあってます。
    ミオさんも温泉に行きたいとか書いてましたよね、実現させたいですよね♪

    • ミオコ のコメント:

      のらさん、こちらこそいつも心暖まるコメント、ありがとうございます。

      そうなんですよね。
      彼に出会ってから、余計と時間が過ぎてゆくのが、早く感じられます。
      お互いの人生のリミットも間違いなく近づいているせいでしょうか?

      一緒にコンビニに行きたい、デパートに行きたい、居酒屋に行きたい。
      ひとつひとつ、普通ならなんでもないような夢が叶ってきて。
      今は、朝まで一緒にいたい、が二人の夢です。
      そしていつかは、温泉旅館に泊まりたいね、そう話しています。

      でも、こんなふうにいつか叶えたい夢を共有出来る相手がいることは、
      きっととても幸せなんでしょうね。
      のらさんと彼女さんも、ひとつずつ夢を実現していってほしいなぁ、
      と、切に願っています。

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